セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(基礎)1

タイトル 消P-469:

DSS大腸炎マウスにおけるTenascin-Cの機能解析

演者 星野 優(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科DELIMITER東京慈恵会医大・解剖学)
共同演者 西條 広起(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科DELIMITER東京慈恵会医大・解剖学), 有廣 誠二(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科), 加藤 智弘(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科DELIMITER東京慈恵会医大・内視鏡科), 田尻 久雄(東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科DELIMITER東京慈恵会医大・内視鏡科)
抄録 【目的】潰瘍性大腸炎(UC)は原因不明の難治性疾患であり病態に細胞外マトリックス(ECM)が関与している.Tenascin-C(TNC)は創傷治癒や癌の浸潤・転移に関与するECMでありUCの病態形成への関与が示唆されている.我々は、DSS大腸炎マウスを用いてTNCの発現・分布を観察することでECMと炎症性腸疾患との関連性を検討した.【方法】8週齢のBALB/cA(n=4)、BALB/cA-TgH(Tnc)(TNC KO mouse)(n=4)、C57BL/6J(n=12)に2%DSSを5日間投与した.BALB/cA、BALB/cA-TgH(Tnc)は、投与5日目(Day5)に大腸を摘出し病理学的に粘膜の変化を観察した.C57BL/6Jは連日2匹ずつ、RhodaminB-isothiocyanate(RITC)標識ゼラチンを血管内に還流後、同様に大腸を摘出し抗TNC抗体で免疫染色を行った.【成績】BALB/cAでは、Day 5で粘膜障害を認めなかったが、BALB/cA-TgH(Tnc)では炎症細胞浸潤、上皮の剥離、杯細胞の減少が認められた.C57BL/6Jでは、Day 0で上皮直下の粘膜固有層浅層にTNCのsignalを認めたが、Day 3では同部のsignalは低下し、粘膜筋板直上の血管から固有層内へRITC標識ゼラチンが漏出する周囲に新たにsignalを認めた.Day 5では、RITC標識ゼラチンの漏出は固有層全層に拡大しそれに伴いTNCのsignalも固有層全層に認めた.【結論】DSSはマウスの系統により薬剤感受性が異なり、BALB/cAでは感受性は弱くC57BL/6Jでは感受性が強いとされている.本研究においてもBALB/cAでは腸炎が誘発されず、TNC KO mouseでは腸炎が誘発された.このことより、TNCが過度の炎症に対し抑制的に働いていることが示唆された.その機序にはECMの細胞間の接着や細胞増殖因子を保持・提供する作用の関与が考えられた.C57BL/6J にて、TNCは炎症に伴い上皮直下の粘膜固有層における発現低下および粘膜障害部位における発現増加を認めたことより、TNCの粘膜バリアおよび組織再構成のへ関与が示唆された.今後ECMの機能解析がUCの病態解明および治療に役立つことが期待される.
索引用語 Tenascin-C, DSS大腸炎マウス