セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(基礎)2

タイトル 消P-474:

骨髄間葉系幹細胞はazoxymethane誘発大腸癌のイニシエーションを一部解除する

演者 那須野 正尚(札幌医大・1内科)
共同演者 有村 佳昭(札幌医大・1内科), 渡邊 秀平(札幌医大・1内科), 中垣 卓(札幌医大・1内科), 永石 歓和(札幌医大・2解剖学), 苗代 康可(札幌医大医療人育成センター), 山下 健太郎(札幌医大・1内科), 山本 博幸(札幌医大・1内科), 今井 浩三(東京大医科学研究所・先端医療研究センター), 篠村 恭久(札幌医大・1内科)
抄録 【背景・目的】骨髄間葉系幹細胞(以下MSC)は細胞治療,遺伝子治療の有望な候補であるが,発癌過程に対する影響に関して一定の見解は得られていない.目的は腸炎関連発癌に対するMSCの作用を明らかにすることである.【方法】1)AOM/DSS発癌モデル. Lewラットにazoxymethane(以下AOM)投与と1週間の2.5%dextran sulfate sodium(以下DSS)の自由飲水にて腸炎関連癌を誘発し,MSC非投与群,MSC投与群(Day0,Day9)の3群に振り分け,20週後の大腸腫瘍数を検討した.2)Acute apoptotic response to genotoxic carcinogen(以下AARGC)モデル. LewラットにAOMを投与し,0,4,8,16,24hで大腸摘出した.MSC非投与群とMSC投与群(-24h,-2h,+2h)の計4群に振り分け,細胞増殖能,AARGC,O6-methylguanine(以下O6MeG)発現と細胞周期関連分子発現を検討した.3)IEC-6共培養実験. 72hのAOM刺激下IEC-6に対し,MSC共培養後のIEC-6の細胞増殖能,アポトーシス誘導能,細胞周期変化を解析した.【結果】1)腫瘍の平均個数はコントロール群と比較しMSC Day0群で有意に減少していた(9.2vs4.2, P=0.023).2)MSC-24h群において,4hでのKi67 labeling index低下,8hでのAARGC抑制効果を認め,MSC-24h群のO6MeG発現が8hで著明に減少していた.またウエスタンブロット法にて,MSC-24h群でのp21発現上昇,Cdk4,リン酸化Rb発現低下を認めた.3)MSC共培養によりIEC-6はG1期停止をきたし,細胞増殖が抑制され,アポトーシスが促進した.【考察】AOM/DSSモデルの腫瘍数減少は,AOMの発癌イニシエーション作用を抑制するMSCのchemoprevention効果と考えられ,その機序はO6MeG付加体除去によるDNA傷害減弱と,O6MeG付加体がG1期停止とアポトーシスに陥る2つの機序が想定された.MSCの発癌抑制効果が示唆されたことで,炎症性腸疾患患者に対する新規MSC治療の臨床応用に向けて重要な知見と思われ報告した.
索引用語 骨髄間葉系幹細胞, 腸炎関連発癌