セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(基礎)2

タイトル 消P-478:

大腸癌におけるDicer mRNA、その3'非翻訳領域とmiR-103発現変化の検討

演者 金岡 繁(浜松医大・分子診断学)
共同演者 濱屋 寧(浜松医大・分子診断学), 栗山 茂(浜松医大・1内科), 山田 貴教(浜松医大・1内科), 杉本 光繁(浜松医大・1内科), 大澤 恵(浜松医大・1内科), 杉本 健(浜松医大・1内科)
抄録 【目的】大腸癌では広範なmicroRNA(miRNA)発現が低下し、miRNAのプロセシングに関与するDicerの発現低下がその低下の一因である。Dicerも3'非翻訳領域(UTR)に様々なmiRNAが結合することにより転写後調節を受ける。3'UTRはpolyadenylation(PA)を経て形成され、Dicer mRNAには近位と遠位側のPA signalをもつ長短の3'UTR をもつisoformが存在し、いずれも同じ蛋白をコードする。近位側でPAがおこる短い3'UTRはmiR-103/107の結合部位が失われ、それらの制御を受けない。そこで大腸癌の臨床検体を用いてDicer mRNA、長い3'UTR Dicer mRNAとmiR-103発現変化を検討したので報告する。【方法】対象は大腸癌66例、進行度の内訳は0期: I期: II期: III/: IV期=2:16:24:13:11であった。内視鏡検査時に腫瘍部と正常部から組織を採取、RNAを抽出後qRT-PCRを行った。TaqManプローブはcoding 領域と近位側のPA signalより遠位側を標的とし、各々codingとlong 3'UTR Dicer mRNA発現を、またmiR-103の発現はTaqMan MicroRNA assayで評価した。【成績】腫瘍部、正常部のcoding Dicer mRNA発現の中央値はそれぞれ8.6 (0-220)、29.0 (2.1-380)であり、腫瘍部で発現が低下していた(P<0.001)。またlong 3'UTR Dicer mRNA発現は腫瘍部で3.9(0-45)、正常部で4.1(0-27)であり差を認めなかった(P=0.90)。Long 3'UTRのcoding Dicer mRNAに対する比は腫瘍部では正常部より高かった(0.44 vs. 0.15; P<0.001)。また腫瘍部と正常部でのmiR-103発現に差を認めず、codingとlong 3'UTR Dicer mRNAの発現に相関を認めなかった。病期、部位、分化度とcoding, long 3'UTR Dicer mRNA発現、それらの比に相関を認めなかった。【結論】大腸癌ではDicer mRNAの発現が低下し、long 3'UTR Dicer mRNAが相対的に多く、miR-103発現の低下がないため、より転写後調節を受け低下する可能性が示唆された。大腸癌におけるDicer発現変化には、転写レベルに加えて転写後調節の異常が関与している。
索引用語 大腸癌, 転写後調節