セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(基礎)3

タイトル 消P-480:

クローン病モデルマウス腸上皮細胞特異的Pipk III欠損マウスの病態解析

演者 堀江 泰夫(秋田大・消化器内科)
共同演者 大西 洋英(秋田大・消化器内科)
抄録 【目的】近年の全ゲノム関連解析は、さまざまな分子がクローン病の発症に関与していることを明らかにした。そのひとつにイノシトールリン脂質の脱リン酸化酵素MTMR3がある。MTMR3とともにインシトールリン脂質の代謝を制御する分子PIPK IIIを腸上皮細胞特異的に欠損するマウス(KOマウス)は、クローン病の臨床症状や病理所見の多くを再現する。そこで、我々は、クローン病の病態解明を目的として、KOマウスの腸管にみられる炎症と線維化の発症機序を解析した。【方法】KOマウスの腸粘膜における膜蛋白とオートファジー関連蛋白の発現、局在をウエスタンブロット、免疫蛍光染色で、線維化関連遺伝子の発現を腸粘膜から精製したRNAを用いてRT-PCR法で解析した。また、KOマウスの腸粘膜における腸管内抗原の易侵襲性をFluorescent dextranを経肛門的に投与することにより評価した。【結果】膜蛋白の発現量は、KOマウスと対照マウスの間で差はみられなかったが、その局在はKOマウスで異常を示しKOマウスの腸上皮細胞では細胞内小胞輸送が障害されていることが示唆された。KOマウスの腸粘膜ではp62蛋白が集積し、オートファジー障害みられた。また、線維化関連遺伝子TGF-beta1、CTGF、上皮間葉転換促進転写因子Snail-1、上皮間葉転換マーカーVimentin遺伝子の発現がKOマウスの腸粘膜では増加していた。KOマウスに経肛門的に投与したFluorescent dextranは、対照マウスに比較して上皮細胞内や粘膜固有層に多く分布した。【結論】Pipk III KOマウスでは、腸上皮細胞における細胞内小胞輸送系やオートファジー異常に基づく腸管内抗原の粘膜への易侵襲性が腸炎を惹起したと考えられる。一方、腸管の線維化には、Pipk III KO上皮細胞における上皮間葉転換が関与している可能性が示唆された。
索引用語 クローン病, PIPK III遺伝子