セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(診断)1

タイトル 消P-486:

当院における腸管スピロヘータ症5例の検討

演者 松岡 歩(岡崎市民病院・消化器内科)
共同演者 徳井 未奈礼(岡崎市民病院・消化器内科), 寺本 彰(岡崎市民病院・消化器内科), 佐藤 淳一(岡崎市民病院・消化器内科), 藤吉 俊尚(岡崎市民病院・消化器内科), 坂野 閣紀(岡崎市民病院・消化器内科), 内田 博起(岡崎市民病院・消化器内科), 飯塚 昭男(岡崎市民病院・消化器内科)
抄録 【目的】腸管スピロヘータ症(Intestinal spirochetosis:IS)は本邦では稀な疾患とされていたが、近年症例の報告が増加している。当院におけるISの臨床的特徴について検討した。【対象と方法】対象は2010年1月1日から2011年12月31日の2年間に当院にて経験したIS5例。その患者背景、臨床的特徴、内視鏡所見などについて検討した。【結果】年齢は30歳から75歳で平均年齢51.6歳、全例が男性で、基礎疾患を有さない例3例、アメーバ性腸炎に合併した1例、潰瘍性大腸炎に合併した1例だった。主訴は下痢2例、便秘1例、便潜血陽性2例だった。スピロヘータが検出された部位は、盲腸3例、上行結腸2例、横行結腸1例、下行結腸1例、S状結腸2例、直腸1例だった。内視鏡所見では、びらん・発赤2例、不整な潰瘍性病変1例、ほか2例は正常と考えられた粘膜から検出された。アメーバ性腸炎に合併した1例のみメトロニダゾール内服にて治療、ほか4例は特に治療は行っていない。下痢を主訴とした2例はISのみが下痢の原因と考えられたが、自然に軽快したため治療終了となった。【考察】ISは、らせん構造を呈したグラム陰性桿菌であるBrachyspira属を原因菌とした人畜共通感染症である。開発途上国では地域に広範囲の感染がみられる一方で、欧米では日和見感染としての報告が多い。本邦では中村らによって1998年に報告されたのが最初で、健診で偶然に発見される症例が多く、感染頻度は1%以下とされている。病理組織学的にはHE染色にて大腸粘膜上皮表面に好塩基性の毛羽立ちとして観察される。当院での症例はすべて中高年の男性であり、全大腸から万遍なく検出され、内視鏡的に特徴的な所見は認めなかった。主訴とは関係なく偶発的にみつかった症例が多かったが、ISのみが下痢の原因と思われる症例も経験した。【結語】当院におけるIS5例について検討した。原因不明の下痢においてISを視野にいれる必要性も示唆された。
索引用語 スピロヘータ, 下痢