セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会合同)

NASHからの発癌:基礎と臨床

タイトル 肝S8-11:

NASH肝癌症例と健診受診者における脂肪肝、非脂肪肝の比較

演者 細川 貴範(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】肥満人口の増加、食生活の欧米化などから今後NASHを背景とした発癌の増加が予想される。NASH肝癌は、正常肝から脂肪肝、NASHを経て肝癌発生に至ると予想されるが、NASHの診断自体が困難であることから、脂肪肝症例における発癌の予測が重要であると考えられる。【方法】当院で初回治療を行った肝癌1504例のうちNASHを背景とする41例と当院で2007年1月から2012年2月までに人間ドックを受診した10319例のうちHBs抗原陽性とHCV抗体陽性を除外し、腹部エコーを行った10222例との背景の比較をおこなった。【成績】健診で脂肪肝を認めなかった症例、健診で脂肪肝を認めた症例、肝癌症例の3群にわけて検討を行った。既往は非脂肪肝、脂肪肝、肝癌でそれぞれ高血圧13.4%,21.0%,76.9%、糖尿病は2.64%,5.73%,66.6%、脂質異常症は7.92%,13.0%,23.1%であった。BMIは21.3vs24.6vs 26.5、ASTは22.2vs25.7vs51.3、ALTは18.6vs29.4vs42.5、γ-GTPは28.9vs48.6vs158.4、HbA1cは5.04vs5.26vs7.09と非脂肪肝と脂肪肝では脂肪肝が、脂肪肝と肝癌では肝癌が有意に高値であった。一方血小板は22.1vs22.7vs13.9、総コレステロールは205vs210vs172、LDLは118vs129vs102と脂肪肝は非脂肪肝に比べ高値であり、肝癌では脂肪肝と比べて低値であった。一方TGは88vs144vs149で非脂肪肝は低値だが、非脂肪肝、肝癌は有意差を認めなかった。【結論】脂肪肝症例は25.8%がメタボリック症候群を合併しており治療介入が必要である症例が多く、脂質異常症についてはLDLの正常化が求められる。しかし本検討ではLDL低下症例の中にはは肝発癌の高危険群が含まれている可能性が示唆された。LDLが低下した場合、TG、HbA1cなど総合的にメタボリック症候群の治療効果を評価し、LDLが単独で低下した場合にはNASHからの発癌も念頭におく必要があると思われる。
索引用語 NASH, 発癌