セッション情報 シンポジウム8(消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会合同)

NASHからの発癌:基礎と臨床

タイトル 消S8-15追:

肝細胞癌を発症したNASH症例の臨床および病理学的特徴

演者 山田 和俊(金沢大附属病院・消化器内科)
共同演者 砂子阪 肇(金沢大附属病院・消化器内科), 金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】近年,生活習慣病の増加によりNASHを背景肝とした肝細胞癌(HCC)の患者が増加している.インスリン抵抗性や肥満は発癌のリスクと考えられているが,未だHCCの高リスク群の抽出は不十分である.今回我々はHCCを発症したNASH患者の特徴について検討した.【方法】対象は2000年1月~2012年1月までに,当施設においてNASHを背景とするHCC加療を行った26例(NASH-HCC)とした.NASHの定義としては組織学的にNAFLD type3,4(Matteoni分類),もしくはBurned-out NASHを疑われ,飲酒歴がなく,HBs抗原陰性かつHCV抗体陰性で,自己免疫性など成因を認めないものとした. NASH-HCC群をHCCの有無に関してHCC非発症NASH群(NASH-non HCC)と比較し,HCCの臨床的特徴に関しウイルス性肝細胞癌群(viral-HCC)との比較を行った.【成績】NASH-HCC 群は,NASH-non HCC群との比較で,PLT,PT活性,ALT,ALB, HbA1c,T-Cho,TGの有意な低下,T-Bil,P-III-P,ヒアルロン酸の有意な増加を認めた.NASH-HCC群のうち,25例はstage3,4の線維化進行例であり,12例は病理学的にBurned-out NASH と考えられる状態であった.今回の検討ではインスリン抵抗性(HOMA-IR>2.5)や肥満はHCCの有無に直接相関を認めなかったが,線維化進行程度とは相関を認めた. NASH-HCCの特徴としてviral-HCC群との比較では,初回治療に根治的治療(手術もしくは局所的治療)を施行した症例では,平均無再発生存期間はNASH-HCC群で有意な延長を認めた.腫瘍マーカーについてもNASH-HCC群ではAFP陽性例(>10ng/ml),PIVKA-II陽性例(>40mAU/ml)は少なく,AFP/PIVKA-IIともに陰性の症例は46.2%にも上った.【結論】NASHを背景とする肝細胞癌は,大多数が線維化高度進行例であった.一方,線維化の進行度はインスリン抵抗性や肥満の有無と関連を認めており,NASH患者における肝細胞癌発症のリスク要因であると考えられた.
索引用語 NASH, HCC