セッション情報 シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の展開

タイトル 消S9-1:

新規バイオマーカーとしての血中circulating microRNAの有用性

演者 星野 敢(千葉大大学院・先端応用外科学)
共同演者 竹下 修由(千葉大大学院・先端応用外科学), 松原 久裕(千葉大大学院・先端応用外科学)
抄録 【背景・目的】microRNA(miRNA)は19-22塩基からなるRNAの一種であり、標的mRNAの不安定化や翻訳阻害によりその発現を制御している。近年になりmiRNAが血中において比較的安定して存在することが明らかとなったが、その存在意義についてはいまだ不明な点が多く今後の検討が待たれるところである。今回我々は難治性の癌である食道癌を対象とし、血中のmiRNAの発現プロファイリングを施行し、癌患者の血中において発現が亢進するmiRNAのバイオマーカーとしての可能性を検討した。【方法・結果】食道癌患者4名と、健常人4名の血清からtotal RNAを抽出しmiRNA arrayによる発現プロファイリングを行った。癌患者において有意に発現が亢進するmiRNAを同定した。発現の差が最も顕著であったmiR-ESCCについて解析を行った。食道癌患者101名と、健常人46名の血清miR-ESCCの発現をRT-PCRにより測定し、miR-ESCCの発現が有意に亢進していることが確認された。血清miR-ESCCの発現を臨床病理学的因子と検討すると、TNM分類における、T3-4/T1-2、N+/N-、StageIII-IV/StageI-IIにてmiR-ESCC発現との間に相関を認めた。食道癌切除症例18例を対象とし、癌部と非癌部におけるmiR-ESCCの発現を検討した結果その発現に差を認めなかった。ROC曲線解析ではAUC:0.7537、cut off値:1.323377で、感度:71.29%、特異度:73.91%という良好な結果であった。【結論】miR-ESCCは健常人と比較し食道癌患者の血清において有意に発現が亢進していた。また、その発現レベルと臨床病理学的因子が正に相関していることが確認された。一方で、組織中では癌部、非癌部で発現に差を認めず、何らかのメカニズムにて癌部より血中に放出されている可能性が示唆された。従来の食道癌の腫瘍マーカーであるSCCやCYFRA、CEA等と比較し、感度、特異度ともに高く、新規バイオマーカーとしての有用性が示されたものと考えられた。今後、miR-ESCCの機能解析や血中移行の機序を解明するとともに臨床応用を目指したシステムの構築を確立したいと考えている。
索引用語 microRNA, 食道癌