セッション情報 シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の展開

タイトル 内S9-2:

新たな胃癌ハイリスク群を対象にした診断法-Helicobacter pyloiri (HP) 関連非萎縮性胃炎からの発癌への対応

演者 渡邉 実香(和歌山県立医大・2内科)
共同演者 榎本 祥太郎(和歌山県立医大・2内科), 一瀬 雅夫(和歌山県立医大・2内科)
抄録 【背景】HP関連萎縮性胃炎が胃癌ハイリスクであることに疑問の余地はなく、この経路からの発生胃癌対策の方法論は、ほぼ確立されている。一方、未分化癌を中心に40%近い癌が萎縮性胃炎を経由せずに発生するとされているが、この発癌経路の詳細は不明である。演者らは、血液検査と画像診断を組み合わせる事により、萎縮性胃炎合併を認めないHP感染者の中に未分化癌のハイリスク群を、具体的に同定可能であることを見出したので報告する。【対象と方法】某職域健診受診健常中年男性5209名中、血清HP抗体陽性かつPG検査陰性例3802名を同定、既報の方法 (Cancer Epidemiol Biomarkers & Prev 17; 838, 2008) に基づいて3群(αβγ群)に分類後、10年間の追跡調査を行った。また、同職域内視鏡検診受診者でHP陽性かつPG陰性例496例を5年間経過観察し、内視鏡所見および胃癌発生率を検討した。【結果】PG陰性群の中で、PG I/II比3.0以下で同定されるγ群では他群に比して胃癌発生リスクが有意に高く、未分化癌発生が目立った。特に内視鏡検診受診γ群の胃癌発生は年率0.75%にも達した。加えて、γ群の胃癌発生症例の83%が、HP抗体価高値(≧500U/ml)を示し、年率1.5%に及ぶ高い胃癌発生率を示した。一方、画像所見上、皺襞肥大型胃炎例は年率1.4%の明らかな未分化型胃癌のハイリスク群であり、さらに、今回の検討対象の5%がHP抗体価高値γ群かつ皺襞肥大型胃炎を呈したが、本集団から57%の胃癌発生が観察されている。【結語】血液検査(PG値、HP抗体価)、そして、皺襞肥大型胃炎の画像所見を組み合わせる事で、これまで未知であった未分化型胃癌ハイリスク群の同定が可能になると考えられた。この結果は、血清PGによる萎縮性胃炎群の同定と合わせて、検診対象の集約と効率化に貢献するものと期待される。
索引用語 ヘリコバクターピロリ, 胃癌