セッション情報 シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の展開

タイトル 消S9-3:

末梢血液検体を用いた新たな消化器癌診断法とその有用性

演者 小村 卓也(金沢大大学院・恒常性制御学)
共同演者 酒井 佳夫(金沢大大学院・恒常性制御学), 金子 周一(金沢大大学院・恒常性制御学)
抄録 【目的】過去に当科では末梢血液における遺伝子発現解析により消化器癌を診断しうる可能性を報告した(Biochemical and Biophysical Research Comm 400 (2010) 7-15)。また、2011年の本会にて、消化器癌患者の末梢血液で、有意に発現変動する遺伝子のプローブを搭載したカスタムチップによる消化器癌診断の可能性を報告した。そこで今回、過去の我々の検討により導き出した、末梢血液における遺伝子発現解析結果を基とした4つのパラメーターを用いた消化器癌検診法を確立し、その有用性を報告する。【方法】血液採取後、即時にRNAが安定化するRNA採血管(PAX geneTMを用いて、既に消化器癌の存在が明らかになっている81名の癌患者および検診受診者22名から2.5mlの血液を採取した。RNAを分離精製し、4x44K Whole Human Genome MicroarrayTM(Agilent社)を用いて遺伝子発現解析を行った。その解析結果から、4つのパラメーター(【1】コンピューター解析ソフトによる消化器癌患者のパターン識別法であるSupport vector machine (SVM)の解析結果【2】以前の当科での検討で同定した、健常者と比較して消化器癌患者に発現変動を認める遺伝子(2,665個)の中で変動しているRNAの数【3】その2,665個の遺伝子の発現パターン【4】消化器癌で特に強く発現変動を認める21遺伝子の発現変動数)を用いて消化器癌罹患の有無および消化器癌の癌腫を判定するアルゴリズムを作成し、その有用性を検討した。【成績】上記アルゴリズムを用いて判定した結果、既に消化器癌と診断されている81名中72名が消化器癌陽性と判定された。検診受診者22名は全て消化器癌陰性と判定され、実際に消化器癌の罹患は認めなかった。以上より特異度100%、感度88.9%であり陽性的中率は100%であった。消化器癌の癌腫推定に関しては、膵癌27名中23名(85.2%)、胃癌26名中18名(69.2%)、大腸癌18名中17名(94.4%)、胆道癌10名中8名(80%)の的中率であった。【結論】末梢血液の遺伝子発現解析による新たな消化器癌診断法の有用性が示唆された。
索引用語 末梢血液, 遺伝子発現