セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(潰瘍性大腸炎)7

タイトル 消P-563:

メサラジン不耐症に対して脱感作療法を行った炎症性腸疾患症例の検討

演者 辺見 英之(松島クリニック)
共同演者 福島 恒男(松島クリニック), 中島 光一(松島クリニック), 野沢 博(松島クリニック), 西野 晴夫(松島クリニック)
抄録 メサラジンは炎症性腸疾患患者の寛解導入あるいは寛解維持療法におけるfirst line drugであり、薬物アレルギーやslow acetylatorによる不耐症が存在し、強い副作用症状を呈して内服継続が困難となる。副作用が強いが、患者に当該薬剤を使用せざるを得ない場合の対処法として、原因薬剤をごく少量から徐々に増量させながら投与し、その薬剤への無反応状態へ誘導を試みる脱感作療法がある。今回、われわれはメサラジン不耐症に対して脱感作療法を施行した炎症性腸疾患患者15例を経験したので、症例と脱感作療法を提示するとともに文献的考察を交えて報告する。【対象と症状】2007年7月から2011年7月にかけて当院で炎症性腸疾患と診断されメサラジンに対して薬剤不耐症を示した15症例(男女比9:6、潰瘍性大腸炎8例、クローン病7例)。平均発症年齢は33.7±11.4歳。 初回のメサラジン投与量の中央値は2250mg(1500~4000mg)で、主な症状は発熱、頭痛、腹痛、下痢などであった。【方法】当該薬物に対して強い副作用が出現後、一旦内服を中止し、その後メサラジンを1mg/日ずつ増量し、内服量が100mg/日に達したあとは10mg/日ずつ増量していった。【成績】脱感作療法の成績は14例(93.3%)が成功し、クローン病1例が漸増途中で380mg/日に達したときに再び症状が出現したため投与を中断し、抗TNF抗体製剤で寛解導入した。脱感作が成功した14例のうち、メサラジンで寛解維持できているのは9例で、ステロイドや抗TNF抗体製剤で寛解維持している症例が5例であった。強い症状に対して脳のMRI検査や、緊急上部内視鏡検査が行われた例や、心因反応と思われた例もあり、正しく認識し、診断することが必要である。【結論】メサラジンに対する副作用の原因は多様で、不明な部分もあるが、薬物アレルギーや、体内で薬物をアセチル化することが困難な症例(slow acetylator)であることが多く、このような症例に対して脱感作療法は有効であり、多くの患者がメサラジンの服用が可能となり、寛解に導入できた。
索引用語 メサラジン不耐症, 脱感作療法