抄録 |
【目的】潰瘍性大腸炎の治療法が増えて治療の選択の幅が広がってきたが、寛解導入、寛解維持薬として基本になるのは5-ASA製剤である。使用可能な5-ASA製剤はペンタサ、アサコール、サラゾピリンの3つがあり、大腸での成分放出についてそれぞれの特徴がある。これらをどのように使い分けていくかは明確ではないが、重要な事となる。そこで今回、1:従来のペンタサとサラゾピリンの長期寛解維持率の比較、2:同じメサラジン製剤でペンタサから新規のアサコールへ変更した時の効果について比較検討した。【方法】1:症状寛解の患者118例のうち、ペンタサ処方群64例、サラゾピリン処方群54例の寛解維持率をKaplan Meier法で比較した。2:ペンタサからアサコールに変更した32例のうち、慢性持続型か再燃を繰り返す再燃寛解型、いわゆる難治例で、ペンタサ4gからアサコールに変更した9例について検討した。変更前、変更後1~2ヶ月後のCAI(Lichitiger)を計算し、CAIが3以下を寛解、3以上低下した場合を有効、上昇した場合は増悪、それ以外を不変とした。その他、内視鏡像、メサラジンの注腸製剤を併用している時は注腸製剤の離脱の有無についても追記した。【結果】1:ペンタサに比べサラゾピリンの長期寛解維持率が有意に高かった。2:9例中3例で寛解になり、2例が有効であった。残りの4例が不変で増悪例はなかった。変更後内視鏡を施行した3例のうち2例で寛解、1例では前回より著明な改善を認めた。また2例で数カ月後に注腸を離脱することができた。【結語】長期寛解維持には、より大腸選択的と考えられるサラゾピリンが有効であった。また難治例で高用量のメサラジン製剤を用いていても、大腸放出型へ製剤を変更することで、改善を見込めることはあり、増悪することは少なかった。比較的症状が軽くて時間に余裕がある場合は、従来の5-ASA製剤を高用量用いても十分改善しない時に、大腸放出型へ製剤を変更することも有用であると考えられた。これらは、局所製剤も含めて大腸選択的な薬剤の選択の重要性を示していると考えられる。 |