セッション情報 シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の展開

タイトル 検S9-4:

糞便中ポルフィリン類の測定による消化管がんスクリーニング検査法の開発

演者 山本 敏樹(日本大・消化器肝臓内科)
共同演者 森山 光彦(日本大・消化器肝臓内科), 土屋 達行(日本大・臨床検査医学)
抄録 【目的】癌細胞中にポルフィリン(PO)類が蓄積することが知られており、臨床の場でも皮膚がんや脳腫瘍ではPOの蓄積を利用した治療が行われている。我々は胃がん患者の糞便中にプロトポルフィリンIX(PPIX)が増加していたことから、糞便中PPIXの測定による消化管癌のスクリーニング検査法について検討を行ってきた。これまでの検討では進行癌と対象群との間でPPIXの測定値は有意差がみられたが、大腸癌では免疫学的便潜血反応と比較すると感度・特異度とも劣る結果であり、その一因としてPPIX以外のPOの増加が予想されるため今回PPIXとPPIXを含むPOを測定し、新規癌マーカーとしての有用性を検討した。【症例】2007年12月から2011年8月の間に当院を受診し、同意が得られた682例のうち、進行胃癌と大腸癌は合計60例(男女比41:19、年齢40-89;65.8)、早期胃癌と大腸癌は46例(34:12、42-86;65.1)であった。また上下部消化管内視鏡検査で腫瘍性病変がないことを確認した81例(51:30、15-87;60.4)を対象とした。【方法】便潜血反応の検査後残った検体からPOを抽出し、PPIXは高速液体クロマトグラフィーを、POは蛍光検出器を用いて測定した。結果はDunnettの検定を行った。【結果】PPIXとPOの測定値とも、進行大腸癌と対象との間で有意差がみられた。POの癌全体での感度・特異度・尤度比は0.50、0.914、4.136、進行癌では0.425、0.913、4.913であった。また進行癌60例中19例でPPIXとPOで判定が不一致であったが、POのみで陽性であったのは5例で、POの測定でがんの検出率が向上するという結果はえられなかった。【考察】有意差は認めるがスクリーニング検査として用いるには感度・特異度とも不十分な結果であった。今後は基礎研究によるデータの集積を行う予定である。
索引用語 消化管, ポルフィリン