抄録 |
【目的】大腸癌と他臓器重複癌(以下,重複癌)に関する臨床病理学的検討を行った.【対象】1988-2007年にA病院外科で施行した大腸癌初回手術2166例を対象とするretrospective studyである.【結果】20年間の大腸癌手術のうち重複癌は248例(11.4%)に確認された.内訳は同時性120例,異時性124例,同時異時性4例である.男女比は同時性2.1:1,異時性1.2:1,同時異時性1:1であった.重複癌の種類別の内訳は,同時性が早期胃癌47例,進行胃癌12例,肺癌10例, 前立腺癌8例,胆嚢癌7例,乳癌7例,腎癌5例, ,肝癌4例,甲状腺癌3例, 膀胱癌3例,喉頭癌2例,食道癌2例,膵癌2例などであり,異時性は進行胃癌24例,早期胃癌21例,乳癌17例, 肺癌10例,子宮癌9例,前立腺癌7例,甲状腺癌7例,食道癌4例,腎癌3例,喉頭癌2例,胆嚢癌2例など,同時異時性については同時性で胃癌2例,甲状腺癌1例,乳癌1例であり,異時性では乳癌2例,舌癌1例,前立腺癌1例であった.男女別にみると胃癌,食道癌,喉頭癌,肺癌,肝癌,腎癌,膀胱癌は男性に,甲状腺癌,胆嚢癌,胆道癌は女性に多い.また,男性の泌尿器癌,女性の乳癌は目立って頻度が増加していた.累積5年生存率は重複癌有り(n=248)71.1%,なし(n=1918)72.5%と差がないが,治癒切除に限ると重複癌有り(n=204)81.5%,なし(n=1504)86.8%と重複癌を有する例が有意に(p<0.05)予後不良となった.一方,重複癌の種類別累積5年生存率は同時性(n=120)64.5%,異時性(n=124)77.5%と異時性重複癌が明らかに良好であるが,治癒切除に限ると同時性(n=97)76.0%,異時性(n=104)86.8%と有意差を認めなかった.【結論】大腸癌と他臓器の重複癌は11%を超える例に認められた.性別,年齢層別の発生頻度,重複癌種の種類と進行程度および遠隔成績の間には特徴があり,これらを把握したうえでのサ-ベイランス実施が重要となる.高齢化が進んだ今日では消化器癌のみでなく,男性は肺癌,泌尿器癌,女性は乳癌,婦人科癌,甲状腺癌などに注意すべきである. |