セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(腫瘍)1

タイトル 消P-582:

大腸腺腫症における結腸全摘・回腸直腸吻合術(IRA)後の長期経過

演者 前畠 裕司(九州大大学院・病態機能内科学)
共同演者 中村 昌太郎(九州大大学院・病態機能内科学), 藤澤 律子(九州大大学院・病態機能内科学), 江崎 幹宏(九州大大学院・病態機能内科学), 熊谷 好晃(九州大大学院・形態機能病理学), 平橋 美奈子(九州大大学院・形態機能病理学), 植木 隆(九州大大学院・臨床・腫瘍外科学), 松本 主之(九州大大学院・病態機能内科学), 北園 孝成(九州大大学院・病態機能内科学)
抄録 【背景】大腸腺腫症に対する予防的大腸切除の術式として以前は結腸全摘・回腸直腸吻合術(ileo-rectal anastomosis; IRA)が主流であったため、IRA術後長期経過例が増加している。【目的】IRA術後に発生する残存直腸癌の特徴を検討する。【方法】1965年~2004年にIRAが施行された大腸腺腫症で、経過観察を行った27例を遡及的に解析した。残存直腸癌の発生率をKaplan-Meier法で算出し、発生例の臨床病理学的特徴を分析した。さらに、ロジスティック回帰分析で直腸癌発生の危険因子を解析した。【結果】対象は男性16例、女性11例、初回手術時年齢9-66歳(平均33.4歳)で、病変数別では密生型(≧1000個)9例、散在型(<1000個)18例であり、13例(48%)で大腸癌合併を認めていた。APC遺伝子変異は検索した21例中13例(62%; 5’側変異 6例, 3’側変異 7例)で認めた。7.6~35.4年(中央値21.6年)の追跡期間中、残存直腸癌を7例(25.9%)で認めた。直腸癌確認までの期間は術後17.6~35.4年(中央値 27.4年)で、累積発生率は25年後13.7%、30年後50.7%であった。追跡期間は直腸癌発生例で有意に長かった(中央値 27.4年vs. 18.9年)が、初回手術時年齢、病変数、初回大腸癌の有無、大腸外悪性腫瘍、APC遺伝子変異、NSAID内服に差はなかった。癌に対し、内視鏡治療を3例、再手術を4例に行った。切除標本の病理所見では、全例高分化腺癌で4例は腺腫成分を伴い、主病変の深達度はm 3例、sm 2例、mp 2例であった。2例では癌が多発しており、3例でリンパ節転移を認めた。1例は再手術後18か月に再発のため死亡した。多変量解析の結果、長期の追跡期間(オッズ比 1.50 [95%CI 1.10-2.83])および大腸外悪性腫瘍合併(オッズ比 46.4 [95%CI 1.54-12900] )が直腸癌発生の有意な危険因子として抽出された。【結論】IRA術後は残存直腸癌が高率に発生するため、注意深い経過観察を要する。
索引用語 大腸腺腫症, 残存直腸癌