セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(腫瘍)2

タイトル 消P-588:

MFG-E8の大腸炎症および発癌への関与

演者 楠 龍策(島根大・2内科)
共同演者 石原 俊治(島根大・2内科), 多田 育賢(島根大・2内科), 岡 明彦(島根大・2内科), 福庭 暢彦(島根大・2内科), 森山 一郎(島根大・2内科), 結城 崇史(島根大・2内科), 川島 耕作(島根大・2内科), 木下 芳一(島根大・2内科)
抄録 【目的】Milk fat globule-EGF-8 (MFG-E8)は、生体内でアポトーシス細胞とマクロファージを架橋し貪食を促進する蛋白質である。我々はこれまでにMFG-E8の投与により腸管の炎症が改善することを報告してきた。一方で発癌や癌の進展に対してはMFG-E8は促進的に働くことが消化器以外の癌で報告されている。今回我々はMFG-E8 knock out (KO)マウスを用いて大腸炎症および大腸発癌モデルを作成し、MFG-E8の機能解析を行った。【方法】野生型マウスとKOマウスを用いて以下のモデルを作成し比較した。(1)大腸炎モデル: DSS自由飲水により大腸炎を発症させ、体重減少、組織学的炎症、炎症性メディエーターを測定した。(2)炎症発癌モデル: Azoxymethane (AOM)を腹腔内投与後にDSSを飲水させ、形成された腫瘍を比較した。(3)自然発癌モデル: AOMのみを反復投与し、形成された腫瘍を比較した。さらに、上皮増殖能について腸炎回復期にPCNAなどの増殖マーカーを用いて比較した。また、in vitroにおいて培養colon26細胞に精製MFG-E8蛋白質を投与し、BrdUの取り込みをEIAで測定した。【結果】KOマウスでは野生型マウスよりも強い腸炎を認めた。このため、炎症発癌モデルではKOマウスに癌が多いと予想したが、結果はむしろKOマウスで癌の個数、大きさが少ない傾向を認めた。自然発癌モデルではさらにこの差が顕著であった。KOマウスでは腸炎回復期の上皮増殖能が低下しており、in vitroの実験においてもMFG-E8投与によって培養細胞へのBrdUの取り込みが促進された。【考察】KOマウスを用いた実験結果から、MFG-E8は腸管炎症に対しては抑制的に働き、大腸癌発生には促進的に働くと考えられた。その機序としてMFG-E8が上皮の生存や増殖を促進させ腫瘍発生に関与する可能性が示唆された。
索引用語 MFG-E8, 大腸癌