セッション情報 シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の展開

タイトル 消S9-6:

糞便中のCOX-2 mRNAとmicroRNAの発現を組み合わせたFecal RNAs testの大腸がんスクリーニングの現状と展開に向けて

演者 栗山 茂(浜松医大・1内科)
共同演者 金岡 繁(浜松医大・分子診断学), 杉本 健(浜松医大・1内科)
抄録 【目的】我々は糞便中のCOX-2 mRNA(以下COX-2)発現を指標にした大腸がん診断法を開発し、その有用性を報告してきた。また大腸がんでは一部のmicroRNA (miRNA)の発現が亢進している。今回、大腸がん患者における糞便中COX-2及び5つのmiRNAsの発現を解析しその大腸がん診断能について検討した。【方法】内視鏡的・病理的に診断された進行腺腫(AA)26例、がん(Ca)138例(病期は0期: I期: II期: III期: IV期=15: 31: 46: 32:14)と対照群126例を対象とした。糞便0.5gからRNAを抽出し、TaqMan assayを用いてCOX-2、miR-21, -92a, -106a, -19a, -20aのqRT-PCRを行った。また同一便で免疫学的便潜血検査(FOBT)1回法と比較した。【結果】COX-2はプラスミドDNAを、miRNAは合成RNAを用いて検量線を作成しコピー数を算定した。糞便中のCOX-2と5つのmiRNAsの発現とも腫瘍群で有意に高かった。カットオフ値を対照群全体の97.5 percentileに設定すると、大腸がん診断におけるCOX-2の感度/特異度は71.0%/96.8%、miR-21は41.3%/96.8%、miR-92aは44.9%/97.6%、miR-106aは45.7%/98.4%、miR-19a 32.6%/97.6%、miR-20a 42.0%/98.4%であり、FOBTは66.7%/98.4%であった。COX-2陰性例ではmiR-21がCa 6例、AA 8例、miR-92a は各々9例、5例の拾い上げが可能であった。COX-2, miR-21, -92aの3マーカーの組み合わせの感度/特異度は79.0%/92.1%でFOBTに比べて有意に高かった(P=0.03)。AA/0期/I期に限定すると、その感度はFOBTの33.3%に対して3マーカーの組み合わせで66.7%で更に有意な差を認めた(P<0.001)。この検査はFOBT同様非侵襲だが、偽陰性、偽陽性という不利益を持ち、コストは3マーカーのランニングで3800円とFOBTと比し高コストである。また前向き研究でのEBMの構築が必要である。【結論】糞便中のCOX-2, miR-21, miR-92aの組み合わせは大腸がん診断、特に進行腺腫から早期のがんにおいて有用であると考えられた。今後コストの低下やEBMの構築が重要である。
索引用語 大腸がん, 便中RNA