セッション情報 |
シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)
消化器がん検診における新しい診断法の展開
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タイトル |
消S9-7:大腸癌の早期・精密化診断を実現するペプチドバイオマーカーの開発および有用性の検討
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演者 |
内山 和彦(京都府立医大・消化器内科) |
共同演者 |
八木 信明(京都府立医大・消化器内科), 内藤 裕二(京都府立医大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】大腸癌死亡率は欧米諸国では低下傾向にあるのに対し、わが国では上昇傾向にある。大腸癌発見のGold Standardである内視鏡検査は、内視鏡医の数など第一次スクリーニング法としての集団検診への導入にはなお問題が多い。そこで本検討は、大腸癌の第一次スクリーニング法として簡便かつ有用な大腸癌の新規血清ペプチドバイオマーカーを検索し、その有用性を解析することを目的とした。【方法】従来の血中ペプチド検出方法では解析のためのタンパク質の除去によるペプチドの損失が問題となっていたが、今回用いた新規の網羅的ペプチドーム解析技術であるBLOTCHIPR‐MS法は、電気泳動と質量分析を組み合わせた包括的ペプチドーム解析であり、微量のペプチドを高感度に検出可能な技術である。対象は本学倫理委員会承認のもと本検討に同意を得られた臨床病期IIおよびIIIの進行大腸癌患者16例、内視鏡治療が可能であった早期大腸癌患者7例、大腸腺腫の患者17例および対照としての健常者12例とした。採取した患者および健常者の血清において、BLOTCHIPR‐MS法にて高い有意差を示すペプチドバイオマーカーを検索した。【結果】BLOTCHIPR‐MS法によって、同定されたペプチドの中で進行大腸癌診断マーカーとして新規にFマーカーと名付けたペプチドが健常者とくらべ大腸癌患者で有意に低下しており、AUC値0.911と高値であった。質量分析の解析でFマーカーはFibrinogenの一部であり、担癌状態における蛋白分解酵素の異常により健常者との間に絶対値の差を生じたと考えられた。健常者、大腸腺腫の患者ではFマーカー値は低下を認めなかったが、早期大腸癌および進行大腸癌患者では有意にFマーカーが低下し、特にリンパ節転移を認めた進行大腸癌の症例では感度100%、特異度76.2%であった。【結語】Fマーカーは構造解析の結果から、これまでに報告のない新規の大腸癌マーカー候補であり、早期大腸癌および進行大腸癌に対して高精度の予測能・診断能が可能であると考えられた。 |
索引用語 |
ペプチドバイオマーカー, 大腸癌 |