抄録 |
【目的】近年,消化器がん健診でPET,PET/CT検査によるスクリーニングが増加しており,PET異常集積部位精査のために大腸内視鏡検査を施行する機会も多い.新しいモダリティであるPET検査による大腸癌がん検診としての有効性について明らかにする.【方法】当健診センターにおいて2005年9月から2011年11月までに健診目的に施行されたPETおよびPET/CT検査(PET)3,820例のうち,PETおよび免疫学的便潜血反応(IFOBT)を施行し,1年以内に当病院にて大腸内視鏡検査が施行された706例(男性474名,女性232名:平均58歳)を対象とし,大腸内視鏡所見をもとにPETとIFOBTの有用性を比較検討した.なお,既知の病変の精査や診療目的で施行されたPETは除外した.Index Lesionとは,がん腫,高異型度腺種および10mm以上の腺種とした.【成績】IFOBT陽性率11%, PET陽性率15%(生理的集積を含めると51%)であった.706例中264例で病変を認め,がん腫7例(SM:3,M:3, carcinoid:1), Index Lesion35例(高異型度:11,10mm以上:17)であった.がん腫の感度はIFOBT17%,PET29%(43%:生理的集積を含め),Index Lesionの感度は,IFOBT26%,PET37%(71%)であった.IFOBTは10mm未満の高異型度の感度が17%と悪く,PETでは明らかな集積2例を含め感度71%であった.また,IFOBTを用いたIndex lesionの検出率は,感度26%・特異度89%であった. 【考察】今回の検討では,症例数が少ないことから癌腫発見数が少なく,明らかなPET検査の有用性が示されなかった.しかし,IFOBTのIndex lesionの感度と特異度が低下しているのは,IFOBTで拾い上げられないがPETで拾い上げている病変が存在し,PETの有用な病変の存在が示唆された.【結論】PET検査は,対費用効果では厳しいものがあるが,PET/CTによる精度上昇,前処置や検査の苦痛,大腸内視鏡医のマンパワーを考えると,PET検査を用いた大腸がん検診は,IFOBTとの組み合わせた新しい検診システムにより大腸がん発見向上に期待ができる検診と考える. |