セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(機能性疾患)

タイトル 消P-619:

大腸鏡から見た過敏性腸症候群(IBS)の性差-性別で発症メカニズムが異なる-

演者 杉本 真也(横浜市立市民病院・消化器内科)
共同演者 水上 健(国立久里浜医療センター・内科), 伊藤 剛(横浜市立市民病院・消化器内科), 角田 裕也(横浜市立市民病院・消化器内科), 今村 諭(横浜市立市民病院・消化器内科), 田村 寿英(横浜市立市民病院・消化器内科), 長久保 秀一(横浜市立市民病院・消化器内科), 諸星 雄一(横浜市立市民病院・消化器内科), 小池 祐司(横浜市立市民病院・消化器内科), 藤田 由里子(横浜市立市民病院・消化器内科), 小松 弘一(横浜市立市民病院・消化器内科), 鈴木 秀和(慶應義塾大・消化器内科)
抄録 IBSの治療薬の効果には国別・性別による差があることが指摘され、日本でも下痢型IBSの有力な治療薬であるラモセトロンの女性での有用性を証明できていない。器質的疾患除外のためIBSの診断治療過程で大腸鏡を施行されることが多い。我々はブチルスコポラミンにより正常者の腸管運動を抑制して無麻酔大腸鏡を施行するとIBS下痢型のほとんどに遷延する蠕動が、便秘型 の一部に遷延する分節型運動が見出されることを報告した【消化器心身医学2009】。これらの腸管運動は鎮静剤の追加投与で速やかに消失し、IBS患者では検査自体の心理的負荷でブチルスコポラミンでは抑制されない腸管運動異常が惹起されると考えられた。その後、無麻酔大腸鏡で腸管運動異常が観察されないIBSの存在が確認され、ほとんどは挿入困難の原因となる下行結腸間膜やS状結腸回転異常を認める腸管形態異常を持ち、症状の原因となる心理的ストレスを自覚していないことが判明した【消化器心身医学 2010】。今回IBS 184名(男性93名、女性91名)に大腸鏡による腸管運動と腸管形態の評価を行った。腸管運動異常は男性40名・女性12名に認め有意に男性に高頻度であった。腸管形態異常は男性31名、女性55名で有意に女性に高頻度であった。病型別では下痢型45名(男性26名、女性19名)・便秘型80名(男性37名、女性43名)・混合型59名(男性30名、女性29名)で、運動異常は下痢型・便秘型ともに男性は女性に比して有意に高頻度(73% vs 42%、50% vs 9%)混合型では男性3名、女性0名であった。形態異常は下痢型・便秘型ともに女性で有意に高頻度(31% vs 74%、60% vs 93%)で、混合型100%に認めた。下痢型・便秘型IBSでは男性はストレスに関係のある腸管運動異常が高頻度であるのに対し、女性はストレスに関係のない腸管形態異常が高頻度であった。大腸鏡からはIBSは性別により発症メカニズムが異なり、発症メカニズムに応じた治療が必要であることが示唆された。
索引用語 過敏性腸症候群, 大腸鏡