セッション情報 シンポジウム9(消化器がん検診学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会・肝臓学会合同)

消化器がん検診における新しい診断法の展開

タイトル 検S9-10:

画像強調内視鏡を併用した大腸腫瘍性病変に対する効率的な診断戦略

演者 花房 正雄(大阪府立成人病センター・消化管内科)
共同演者 石原 立(大阪府立成人病センター・消化管内科), 田中 幸子(大阪府立成人病センター・消化器検診科)
抄録 【背景と目的】1)全ての大腸ポリープを摘除すると大腸癌の死亡割合を減少させることが報告され、正確により多くのポリープ性病変を発見し治療する重要性が再認識されている。2)より正確に病変を発見すれば、内視鏡治療だけでなく病理診断に伴う労力や費用の増加も問題となる。内視鏡観察で組織型を診断する、いわゆるoptical diagnosisを実践することによって、癌や高異型度腺腫といったhigh risk lesionを疑う病変に限定して病理診断を行うと、病理診断に伴う労力や費用を抑制できる可能性がある。画像強調内視鏡(IEE)を併用することによって、正確により多く、かつ労力や費用をより効率的に大腸腫瘍性病変の診断戦略を確立することを目的とした検討を行った。
【方法】1)病変を発見する工夫として、先端透明フード(TH)を装着した自家蛍光内視鏡観察(AFI)で大腸内視鏡検査を行うことで(AFI+TH)、無作為化比較試験で白色光のみでの観察(WLI)に対する有用性を検討した。2)癌などのhigh risk lesionを効率的にoptical diagnosisする観察方法を選択するため、インジゴ・カルミン色素撒布(IC)に拡大内視鏡観察(ME)を併用した観察方法(IC-ME)と、新しい観察方法である狭帯域光観察(NBI)にMEを併用した観察方法(NBI-ME)とで、癌に対する診断精度を非無作為化のクロスオーバー比較試験で検討した。
【成績】1)561症例が登録された無作為化比較試験の結果、WLI群では1症例あたり1.19個の腫瘍性病変を発見したのに対し、AFI+TH群では1症例あたり1.96個の腫瘍性病変を発見できた。2)100病変(68症例)が登録された非無作為化比較試験の結果、IC-MEの癌に対する感度[95%信頼区間]が46[26-67]%であったのに対し、より簡便な観察方法であるNBI-MEの感度は60[39-79]%であった。
【結論】AFI+THで病変をより正確に発見し、NBI-MEで癌が疑われる病変のみを選択的に病理診断することによる、IEEを併用した大腸腫瘍性病変に対する効率的な診断戦略を確立できる可能性が示された。
索引用語 IEE, 大腸腫瘍