セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

大腸(その他)3

タイトル 消P-639:

当院におけるアメーバ大腸炎の現況

演者 奥新 和也(JR東京総合病院・消化器内科)
共同演者 大前 知也(JR東京総合病院・消化器内科), 松本 裕太(JR東京総合病院・消化器内科), 吉原 靖典(JR東京総合病院・消化器内科), 八木岡 浩(JR東京総合病院・消化器内科), 赤松 雅俊(JR東京総合病院・消化器内科), 岡本 真(JR東京総合病院・消化器内科)
抄録 【目的】アメーバ大腸炎はEntamoeba histolyticaによる感染性腸炎で、本邦でも増加傾向とされる。都市型の一般病院である当院の症例を分析しその現況を俯瞰したい。【方法】2006年4月から2011年12月に当院で施行された下部消化管内視鏡11946件の内、内視鏡的にアメーバ大腸炎と診断された21例(0.18%)を対象とした。診断時の年齢、性別、主訴や検査理由、感染の局在、病理学的診断の有無、治療方法、内視鏡的治癒確認の有無、海外渡航歴、同性間性交渉やcommercial sex worker(CSW)との接触の有無、HBV・HIV・梅毒等性行為感染症の有無について検討した。【成績】性別は男性20例(95.2%)、女性1例。平均年齢は44才(26-64才)。検査理由は血便・腹痛等便通異常を伴う症例が12例(57.1%)、便潜血陽性等無症状の症例が9例。有症状だが便潜血陽性を契機に受診に至った症例も3例あった。感染の局在は盲腸病変を有する症例が14例(66.7%)、直腸病変を有する症例が11例(52.4%)。無症状の症例では盲腸病変のみが7例(77.8%)と分布に明らかな差が認められた。病理学的に全例で虫体が確認できた。治療は全例でメトロニダゾールが投与された。内視鏡的に治癒を確認された症例は12例(57.1%)で、症状改善で終診となった症例も多かった。海外渡航歴は5例で確認できたが感染との因果関係は明確でなかった。同性間性交渉は1例も確認できなかったが、CSWとの接触や自身がCSWである場合が3例あった。HIV感染者は0例であったが感染の確認自体が7例と少なかった。一方で術前スクリーニングされるHBV・HCV・梅毒は全例で確認できており活動性の感染を示す例は無かった。【結論】無症状の症例が21例中9例と比較的多く認められ、性行動が多様化する現在、潜在的な感染の拡がりが危惧された。また、HIV感染や免疫不全状態等の全身疾患が無い場合アメーバ大腸炎は外来診療がベースとなるため、病歴聴取での性行動の把握や検査時に同意が必要なHIV検査が十分に行えているとは言えず今後の課題と考えられた。
索引用語 アメーバ大腸炎, 便潜血検査