抄録 |
【目的】PIVKA-IIは、肝細胞癌(肝癌)の腫瘍マーカーとして頻用されているがwarfarin服用や黄疸、アルコール飲酒などによるビタミンK欠乏により上昇して偽陽性になることが問題点として指摘されている。そこで本研究では、ビタミンK欠乏時に誘導されるPIVKA-IIを特異的に認識する改良型PIVKA-II測定試薬を用いてNX-PVKAを測定し、PIVKA-II/NX-PVKA (以下NX-PVKA-R)を求めることによりNX-PVKA-Rの腫瘍マーカーとしての有用性を検討した。【方法】2009年10月から2012年3月までに当院を受診した肝癌170例、慢性肝疾患61例、閉塞性黄疸12例及びwarfarin服用者10例の計253例を対象とした。従来のPIVKA-IIはECLIA法(cut off 40mAU/ml)により、NX-PVKAはビタミンK欠乏性PIVKA-IIに特異的に反応するp11,p16モノクローナル抗体を用いた sandwich ELISAにより測定し、NX-PVKA-Rを算出した(cut off 1.4)。免疫染色は、p11及びp16抗体を用いてLSAB法により行った。【成績】従来のPIVKA-II陽性率は、肝癌70%(119/170), 慢性肝疾患29%(18/61), 閉塞性黄疸58%(7/12), warfarin服用者100%(10/10)であり、これまでの報告とほぼ合致する所見であった。一方、NX-PVKA-R陽性率は肝癌57%(97/170), 慢性肝疾患6.6%(4/61), 閉塞性黄疸8.3%(1/12), warfarin服用者0%(0/10)であり、肝癌は他疾患に比べて有意に高かった(p<0.01)。NX-PVKA-R陽性率は、肝癌のstageの進行とともに有意に上昇した(p<0.05)。PIVKA-IIとNX-PVKA-Rの特異度はそれぞれ61%と92%であった。ROC解析では、NX-PVKA-RのAUCはPIVKA-IIに比べて有意に高かった(P<0.05)。p11及びp16を用いた免疫染色では、warfarin服用者(剖検例)の正常肝組織は強く染色されたが、肝癌組織は染色されなかった。【結語】NX-PVKA-Rは、warfarinや黄疸に伴うビタミンK欠乏によるPIVKA-II偽陽性例を除外しうることが示され、肝癌の診断に有用であると考えられた。 |