抄録 |
【目的】各種画像検査の近年の進歩に伴って肝癌のスクリーニングの選択も造影超音波やEOB-MRIなど多くなった。そこで近年の医療事情を鑑み肝癌検診システムとして最も効果的な検査方法を費用対効果の観点より検討した。【方法】 C型慢性肝炎患者の自然史をシミュレートしたマルコフモデルを構築、スクリーニング方法を5群[無群(スクリーニング無),US単独群(3M毎のUSのみ),造影US群(3M毎のUS+6カ月毎の造影US),造影CT群(3M毎のUS+6カ月毎の造影CT),EOB-MRI群(3M毎のUS+6カ月毎のEOB MRI群)]に分類して検討した。費用と感度のBase Valueはそれぞれ、US5500円,感度70%,造影US22000円,感度85%,造影CT37000円,感度90%,EOB-MRI44000円,感度95%で設定した。年齢別死亡率は平成19年度男性の簡易生命表を使用、その他の移行確率・費用は文献より求めた。解析にはTreeAge Pro 2009を使用した。【結果】各群の期待余命を背景肝F1,F2,F3,F4別にそれぞれ求めると、肝癌検診無群(17.42年,14.70年.11.92年,9. 99年),US単独群(17.61年,15.37年,13.03年,10.51年),造影US群(17.76年,15.66年,13. 59年,11.60年),造影CT群(17.77年,15.67年,13.61年,11.62年)、EOBMRI群(17.77年,15.68年,13.62年,11.63年)であり、造影US群、造影CT群、EOB-MRI群で大きな差は認めなかった。生活の質を補正した1年(Quality adjusted life year:QALY)延命するためにかかる費用cost-effectiveness ratio:ICERはF3の55歳男性において、US単独群139万円、造影US群203万円、CT群221万円、EOB-MRI群227万円であった。【結論】C型慢性肝疾患患者に対する肝癌検診では、3カ月毎のUSに6カ月毎の造影US追加するのが費用効果的であるが、他群との差は大きくないため、発癌率や超音波描出条件を勘案して適切な組み合わせで検討することが望ましい。 |