セッション情報 シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト

タイトル 外S10-2:

ヒト低分化型肝細胞癌株からの癌幹細胞の誘導の試み

演者 吉村 清(山口大・消化器・腫瘍外科学)
共同演者 恒富 亮一(山口大・消化器・腫瘍外科学), 岡 正朗(山口大・消化器・腫瘍外科学)
抄録 (背景)癌幹細胞は癌の大きな特徴である全身の組織に転移すること、化学療法や放射線に対して抵抗性を示すことに大きな役割を果たしていると考えられている。つまり癌幹細胞について研究することが癌の特徴について理解し、治療方法の確立にもつながると考えられる。我々は肝細胞癌細胞株を培養により癌幹細胞が豊富な細胞集団を誘導する試みを行い、これを元の癌細胞株と比較検討した。(方法)低分化型肝細胞癌細胞株SK-HEP-1を特殊な無血清培養液を用いて培養した。ここで培養により増殖した細胞と元の癌細胞株をリアルタイムRT-PCRを用いて、幹細胞マーカーや、上皮間葉系移行(EMT)関連分子等の発現をmRNAレベルで測定した。さらに抗癌剤への薬剤感受性をMTSアッセイを用いて測定した。(結果) 培養により付着細胞から、Sphereが形成された。このSphereを癌細胞と比較すると、NANOG,CD133,ALDH1のmRNAの発現が上昇していた。5-FU,シスプラチンと共培養すると薬剤への感受性がSphere細胞の方が低下していた。またこの際にABCトランスポーターのmRNAの発現がSphere細胞で上昇していた。EMT関連分子(FN1,VIM,TWIST2,SNAI3)の上昇も認められた。(結語)本培養法で、肝細胞癌細胞株より、癌幹細胞様の細胞集団の誘導ができた。形態的にSphereであり、幹細胞マーカーを発現していた。現在この細胞集団の解析をさらに進めている。
索引用語 癌幹細胞, 肝細胞癌