セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他5

タイトル 消P-679:

消化器疾患により貯留した腹水中のヒアルロン酸濃度の検討

演者 光井 洋(東京逓信病院・消化器科)
共同演者 関川 憲一郎(東京逓信病院・消化器科), 小林 克也(東京逓信病院・消化器科), 大久保 政雄(東京逓信病院・消化器科), 奴田 絢也(東京逓信病院・消化器科), 橋本 直明(東京逓信病院・消化器科)
抄録 【はじめに】ヒアルロン酸(HA)は、二種類の糖が繰り返し連結するグリコサミノグリカンの一種であり、関節などの細胞外マトリックスに広く分布する。臨床上では、肝硬変(LC)患者での血中濃度や、悪性中皮腫患者での胸水中の濃度が上昇することが知られている。しかし、腹水中のHA濃度を測定した報告は少ない。【目的】肝硬変を含む腹水貯留性諸疾患において、腹水中のHA濃度を測定し、比較検討する。【方法】2009年から当科に入院した患者のうち、腹水と血液でのHA濃度が測定し得た症例について、病態や他の測定値との関係を検討した。【成績】LC 8症例と慢性肝疾患(CLD)のない患者3例、計9例が対象。LC患者中、6例は通常の漏出性腹水であったが、他の1例がイレウスを、別の1例が大腸癌による穿孔性腹膜炎を合併していた。通常のLC6症例では、腹水HA濃度は1040~10500 (ng/ml) で、血清でのそれは240~1890であった。腹水中濃度は、腎障害を認めた2例では高値であり、Child-Pugh scoreとも関連した。LCで、イレウス合併症例では、腹水:血清のHA濃度は各14500 : 600、穿孔性腹膜炎合併例では各24800 : 5740と、(特に腹水濃度が)より高値であった。腹水/血清のHA濃度の比は、2.7~24と広く分布した。非CLD患者は、結核性腹膜炎、虚血性腸炎に合併した腹膜炎、腹膜悪性リンパ腫が各1例であった。血清のHA濃度は21~156と低い一方、腹水中濃度は8450~231000と上昇し、腹水/血清の濃度比は190~2300と著明高値であった。【結論】LC患者の腹水中HA濃度は血清中よりも高く、肝機能低下、腎障害、合併した炎症などにより修飾される。一方、非CLD患者で腹膜の炎症が強い病態の場合、腹水中濃度と腹水/血清での比が著明に上昇する。【結論】腹水中のHA濃度は、腹膜の炎症と肝機能、腎機能などの諸因子により影響される。その測定は、腹水貯留性疾患の病態理解に寄与すると考えられる。
索引用語 ヒアルロン酸, 腹水