セッション情報 ポスターセッション(消化器病学会)

その他6

タイトル 消P-684:

糖尿病患者における消化器癌死亡の実態;地域中核病院での17年間、フォロー率93%のRetrospective Study

演者 井上 正晴(山梨県立中央病院・糖尿病内分泌内科)
共同演者 望月 仁(山梨県立中央病院・消化器内科), 小嶋 裕一郎(山梨県立中央病院・消化器内科), 鈴木 洋司(山梨県立中央病院・消化器内科), 小俣 政男(山梨県立中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】最近、メタ解析により糖尿病患者において膵癌・肝癌・大腸癌で発症リスクが高いことが報告された。今回、発表者の一人(MI)が1995年当院において糖尿病外来を開始し、同年12月までに診療した316名の長期(17年間)の予後調査を行い、糖尿病患者の死因および死因に寄与する因子について検討した。【方法】1.対象は1995年4月から12月に、MIが診た連続する316名の糖尿病患者。2.102名(32.3%)は外来通院中。残りの214名に関してはカルテ及び電話で調査。3.フォロー開始時(1995年)患者背景臨床データを用い、死亡寄与因子の多変量解析施行。患者背景は、平均年齢60歳(16-83)、初診時平均HbA1c8.4%(JDS)(4.7-16.6)、初診時平均BMI22.7(14.9-34.7)。316名中、1型糖尿病は10例、残りは2型糖尿病。【結果】生存175例(55%)、死亡118例(37%)、23例は不明(7%)。17年間の追跡率は93%。死因は血管病変死亡(血管死)38例(27%)、悪性新生物死亡(癌死)が44例(38%)、感染症が16例、その他(事故・肝不全など)21例。総死亡に寄与する因子は年齢(P<0.001)、性別(P=0.033)、BMI(P=0.001)。血管死及び癌死に関する寄与因子を個々に検討すると、HbA1cが唯一の危険因子(P<0.001)であった。ことにHbA1cが8.0%以上は、血管死の(P<0.001)、7.9%以下は逆に癌死の危険因子であった(P<0.001)。癌死44例のうち、消化器癌は20例45%。うち肝細胞癌9例(20.5%)、大腸癌4例(9.1%)、胃癌3例(6.8%)、膵癌3例(6.8%)であった。肝細胞癌はすべてC型肝炎からの発症であった。【結論】本研究では、HbA1cが血管死及び癌死の重要な因子であったが、HbA1cが8.0%以上は血管死、HbA1cが7.9%以下は癌死のリスクが高いという極めて興味深い結果が得られた。今後は、HbA1c7.9%以下の癌死が標準化死亡率SMR(Standardized mortality ratio)を上回るか否かの検討が必要である。
索引用語 糖尿病, 死亡原因