抄録 |
【目的】肝・胆道疾患における緩和ケアチーム(Palliative Care Team:PCT)の役割とチームが有効に機能するための要件について検討する. 【方法】奈良県立医科大学附属病院PCTに紹介された院内の肝・胆道疾患症例について, 疾患の内訳, 紹介目的を集計し, さらにPCT支援期間中のPCTからの提案内容と時期を解析し, PCT活動が緩和ケア上の全ての問題に対応するための要件について検討した. 【成績】1)2007年2月から2012年3月までにPCTに紹介された693例中, 肝・胆道疾患症例は32例(4.6%)で, 外来通院中に紹介された症例は4例であった. 2)疾患の内訳は肝細胞癌18例(56.3%),胆管細胞癌7例(21.9%),胆嚢癌4例(12.5%),肝硬変2例(6.3%),胆嚢炎1例(3.1%)であり, PCT支援期間は1~232日間(中央値27日間)であった. 3) 紹介目的となった問題は, 疼痛19例(59.4%),不安6例(18.8%),せん妄4例(12.5%),食思不振4例(12.5%),倦怠感4例(12.5%),その他5例(15.6%)であった. 4)PCT支援期間中に新たに生じた問題に対するPCTからの「追加提案」例は15例(46.9%)であり, その内容はせん妄,高カルシウム血症,味覚障害,吃逆,脱毛,アカシジア,不眠の対策や退院/在宅移行調整,家族ケア,鎮静への対応と多岐にわたった. 初回紹介時から追加提案までの期間は3~224日間(中央値28日間)であった.【結論】PCTに紹介された患者の約半数は経過中にチームが関与すべき新たな,多様な問題を呈していた.PCTがそれらの問題に適切に対応し,追加提案するためには対象患者に一定期間かかわり続ける必要がある.望ましい包括的な緩和ケア実現のために,がん早期から患者を継続してフォローするPCT体制が必要であることが示唆された. |