抄録 |
悪性腫瘍が死因の第一位になって久しい。その中でも消化器癌は依然として頻度が高く、日常診療において日々遭遇することが多い。一方でがん対策基本法、第五次改正医療法の施行により早期からの緩和ケアの実践、在宅医療、在宅緩和ケア推進の方向性が一層明確となった。推進すべきことは、がん医療の均てん化であり、取りも直さず早期からの緩和ケアの実施であろう。さらに、がん終末期の療養の場として、大多数の患者が自宅を求めているのに対して、在宅緩和ケアの提供が重要であると思われる。一般に消化器癌は、その進行に伴い栄養吸収障害、とそれに伴う代謝異常、腸閉塞症状を高頻度に併発しやすい。患者にとっては進行するるい痩、持続的な嘔気、嘔吐、腹部膨満など、癌性疼痛以外の耐え難い症状に苛まれやすい。現在推定される予後、状態により、様々な治療の選択肢が可能であるが、勤務医だけでは十分な緩和ケアの提供は困難で、院内においては多職種からなる緩和ケアチームによるチームアプローチが重要である。その円滑な実践には緩和ケアの研修、教育が欠かせない。当科においては、緩和医療に対して、緩和手術のみならず、院内・地域における緩和ケアの教育・実践、在宅緩和ケア、地域連携による在宅緩和ケアを積極的に推進してきた。平成18年より緩和ケアチームを主導し、オープン参加の毎月の緩和ケアセミナー、症例検討会、カンファランス、ラウンドを実施している。また在宅医療では、悪性疾患がほとんどを占め、在宅緩和ケアを行っている。在宅での看取りを半数以上で行った。在宅でHPN、在宅がん化学療法、PEG造設、胸腹水の除去など、急性期入院中から継続的な切れ目のない緩和医療の実施に重点をおいて加療してきた。一方、在宅緩和ケアの充実のためには、地域での連携、病診連携が必要である。当科はいわき市南部で医師会支部の緩和ケア研修会、多職種参加による合同在宅緩和ケア研修会・連携の集いを主催し、地域連携緩和ケアクリティカルパスを作成、顔の見える連携を目指している。今回当科が行っている院内と地域における緩和ケアに対する取り組みを報告する。 |