セッション情報 シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト

タイトル 外S10-6:

細胞融合による骨髄由来幹細胞のがん幹細胞化

演者 古泉 友丈(昭和大病院・消化器・一般外科DELIMITERNational Cancer Institute, NIH, USA)
共同演者 I.  Avital(National Cancer Institute, NIH, USA), 村上 雅彦(昭和大病院・消化器・一般外科)
抄録 (目的)骨髄由来幹細胞が、消化器固形癌との細胞融合を経てがん幹細胞様の性質を獲得することを証明する。(方法)本研究は当該施設の倫理審査委員会および動物実験審査委員会の承認を得ている。a. ヒト健常者ドナーのCD34陽性骨髄細胞(BM)を、放射線照射後の免疫不全(NSG)マウスに異種移植しキメラマウスを作成、4週間後、大腸癌患者の手術摘出標本から作成された癌細胞株(CA)をキメラマウスに異種移植した。レンチウィルス由来の異なる蛍光導入遺伝子もしくは異なるinnate HLA型をBM・CAを同定する標識マーカーとして用い、キメラマウスに発生した腫瘍を評価した。b. 異なる導入遺伝子を持つ2種類の同系マウスを用いてキメラマウスを作成後、化学的発癌物質(DENもしくはCCl4)を長期投与(30~70週)し発生した肝癌を評価した。(結果)a.キメラマウスに発生した腫瘍のうち2~5%の細胞がFACSおよび蛍光顕微鏡でBM・CA両方の標識マーカーを発現し、CEA陽性かつCD45陰性の性質を示した。発生した腫瘍細胞を標識マーカーを用いて4群に分離し各群を再度NSGマウスに移植すると、16週後BM標識マーカー陽性(BM+)かつCA標識マーカー陽性(CA+) / 陰性(CA-)細胞のみが腫瘍を再発生させた。BM+かつCA+/- 細胞は、pluripotency gene (Sox-2 (>200 folds), MYC, Notch, Numb, CD44, CDH1, BMP1, CXCL12, FOXA, FGF1-3, ALDH-1/2) のup-regulationを示し、sequence specific PCRおよびPyro sequencingでBM・CA両方の標識遺伝子を発現した。再発生した腫瘍はより低分化な組織像と高いKi-67発現を示し、両標識マーカー陽性腫瘍細胞のみがKaryotypingで対照群の約2倍の染色体数を示した。b. 発生した肝癌のうち、3~7%の細胞が、ドナー骨髄細胞由来導入遺伝子を発現しCD45陰性の性質を示した。現在解析中の結果と併せて報告する。(結語)骨髄由来幹細胞が細胞融合を経てがん幹細胞様の性質を獲得し、癌の維持・増殖に関与することが示唆された。
索引用語 骨髄由来幹細胞, 細胞融合