セッション情報 シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト

タイトル 肝S10-7:

ゼブラフィッシュ肝発癌モデルを用いた肝細胞幼若化、老化に関する検討

演者 藤澤 浩一(山口大・修復医学教育研究センター)
共同演者 寺井 崇二(山口大大学院・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大・修復医学教育研究センターDELIMITER山口大大学院・消化器病態内科学)
抄録 【目的】癌幹細胞はヘテロな細胞集団であり、その癌幹細胞は正常の幹細胞と同じように“自己複製と分化能”する力があり,様々な癌細胞を作り出す。その維持機構については、細胞虚血環境が重要であるという考えも注目されている。癌細胞の発生、増殖には、細胞の幼若化、老化が重要な役割を果たしていると考える。ゼブラフィッシュは脊椎動物のシンプルなモデルであり、マウスと比べて個体が小さく飼育コストがかからないことから薬物スクリーニングにも有効な系である。今回、ゼブラフィッシュモデルを用いて、老化、再生、肝発癌におけるSenescence marker protein 30 (SMP30)/ regucalcin(RGN)について、過去、癌のFociのマーカーとして報告してきたMaid分子と比較検討した。【方法】生後2ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、36ヶ月のゼブラフィッシュでの老化過程におけるSMP30mRNAの発現の検討、また部分肝切除後の肝再生また発癌系でのSMP30, Maidの発現を検討した。また200ppmのDENに2ヶ月間浸漬し,投与後水道水で4カ月生育させFoci, 肝細胞がん、胆管細胞癌、混合型肝がんの3系統の癌を誘導し、SMP30, Maidの発現を検討した【成績】SMP30mRNAの発現は、老化の進行に伴い発現が低下していた。SMP30部分肝切除後および急性障害でSMP30/RGNの発現が低下したが、Maidは部分肝切除によりPCNAと同期し増加していた。発癌モデルでは、SMP30は、Foci、肝細胞がん, 胆管細胞がん,混合型肝がんすべてに背景肝と比べ発現が低下していたが、MaidはFoci部分に発現が高く、癌化の進行に伴い発現量は低下していた。【考察】今回使用した発癌モデルにおいて、老化に関与すると考えられるSMP30やMaidの発現が変化していたことは、肝発癌初期において細胞老化に関わる代謝系も変化している可能性を新たに示唆した。この結果は、発癌制御機構を考える上で細胞老化の視点を持って検討する重要性を示唆する。
索引用語 肝癌, ゼブラフィッシュ