セッション情報 | シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト |
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タイトル | 肝S10-8:Non-canonical Wnt 経路による肝幹/前駆細胞の増殖/分化の調節 |
演者 | 柿沼 晴(東京医歯大・消化器内科DELIMITER東京医歯大大学院・分子肝炎制御学) |
共同演者 | 朝比奈 靖浩(東京医歯大・消化器内科DELIMITER東京医歯大大学院・分子肝炎制御学), 渡辺 守(東京医歯大・消化器内科) |
抄録 | 【目的】Non-canonical Wnt経路の代表的なリガンドであるWnt5a及びその下流分子は、様々な臓器で細胞極性及び運動性の制御に関与する。Wnt5a は胃癌においてその発現亢進が予後不良因子となることが報告される一方で、大腸癌細胞株では増殖を抑制することが知られている。正常肝細胞でWnt5aが発現することは報告されているが、肝癌に於いては明確な報告がなく、肝幹/前駆細胞におけるその機能は不明である。本研究では、Wnt5aおよびその下流分子が肝幹/前駆細胞の増殖/分化に対する機能を検討した。 【方法】Wnt5a欠損マウスの肝臓について同腹の野生型マウスと比較して解析した。野生型マウス胎仔肝臓から分離した初代肝幹/前駆細胞を用いて増殖を解析するコロニー形成試験、分化を解析する肝細胞もしくは胆管細胞分化誘導培養系にいてWnt5aの機能について解析した。肝前駆細胞株(HPPL)を用いた胆管形成モデルにおいて、Wnt5aおよびその下流分子の機能を解析した。 【成績】Wnt5a欠損マウスの胎生肝臓では、Notch-1/Notch-2及びSox9の発現レベルが高く、CK19/HNF1β陽性細胞で構成されるprimitive bile ductal structureの数が野生型と比較して有意に増加し、胎仔期の胆管形成が亢進していた。初代肝幹/前駆細胞培養系においては、Wnt5aを添加による増殖性の有意差は認められなかった一方で、肝細胞成熟化を誘導すると、成熟化マーカーの発現量が増加した。反対に、胆管細胞形成を誘導すると胆管細胞型コロニーの形成遅延を認め、HPPLを用いた胆管形成モデルにおいてWnt5aを添加すると、管腔様構造の数と径は有意に減少した。Wnt5a下流の候補分子のうち、Calmodulin-dependent protein kinase II(CaMKII)は、その活性阻害により胆管細胞型コロニーの形成が促進され、Wnt5a欠損マウス肝臓におけるリン酸化(活性型)CaMKIIは野生型に比して有意に減少していた。 【結論】Wnt5a-CaMKII経路は肝幹/前駆細胞において胆管細胞分化を抑制的に調節していることが示された。 |
索引用語 | 肝幹細胞, Wnt5a |