セッション情報 |
シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)
肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト
|
タイトル |
肝S10-9:低酸素環境におけるβ-catenin-TCF-4相互作用と肝癌の悪性化
|
演者 |
古賀 浩徳(久留米大・消化器内科) |
共同演者 |
鳥村 拓司(久留米大先端癌治療研究センター), 佐田 通夫(久留米大・消化器内科) |
抄録 |
【背景と目的】T-cell factor (TCF)-4はWnt/β-cateninシグナル伝達系の中枢転写因子で、β-cateninと相互作用しながら幹細胞や癌幹細胞の形質を厳密に制御している。最近、Kimらは14種類のヒトTCF-4 isoformを単離した(Exp Cell Res 2011)。我々は、それらのisoform中で、転写能に影響を与える機能モチーフ「SxxSS」が欠落したisoform (J型)と、そのモチーフを有するK型のペアに注目し、J型に顕著なtumor-initiating potentialがあることを示した。その機序として、「SxxSS」の欠落が低酸素誘導因子(HIF)を介した低酸素耐性に関与しうることを示唆した(投稿中)。低酸素環境への適応は幹細胞や癌幹細胞の重要な特性の一つである。今回、その機序をさらに明らかにするため、J型とHIF-1αおよびβ-cateninとの蛋白-蛋白相互作用を検討した。【材料と方法】ヒト肝細胞癌(HCC)細胞株HAK-1A (Yano et al., Hepatology 1993)を用いた。Mock、J型、K型の各安定発現細胞株を樹立した。低酸素環境は塩化コバルトでmimicした。蛋白解析には全細胞あるいは核抽出液を用い、Western blot、免疫沈降、2次元電気泳動等でおこなった。【結果】β-cateninの発現量は、低および正酸素環境下ともに上記3細胞種間で有意差は見られなかった。しかし免疫沈降の結果、β-cateninとTCF-4との会合はJ型で顕著に認められた。さらに2次元電気泳動では、β-cateninおよびHIF-1αはJ型と同じライン上にブロットされ、これら3者が蛋白複合体を形成していることが示唆された。【結論】β-cateninはHIF-1αと会合することで細胞の低酸素適応に寄与することが報告されているが(Kaidi et al., Nat Cell Biol 2007)、今回の知見を加味すれば、その会合にさらに「SxxSS」欠損TCF-4が相互作用することが、癌細胞の低酸素耐性獲得に重要であることが示唆された。 |
索引用語 |
癌幹細胞, 蛋白間相互作用 |