セッション情報 シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト

タイトル 外S10-10:

肝癌における幹細胞マーカーの意義の再認識治療抵抗性克服への戦略

演者 森根 裕二(徳島大・外科)
共同演者 島田 光生(徳島大・外科), 金本 真美(徳島大・外科)
抄録 【はじめに】難治性癌において癌幹細胞が同定され、我々も肝内胆管癌の癌幹細胞関連マーカー(CD133)とHIF-1の関連を報告した(Shimada. J Gastroenterol. 2010)が、一方で幹細胞マーカーは正常幹細胞の性格を反映している可能性もある。今回、幹細胞マーカー発現意義の再認識とともにヒストンアセチル化による幹細胞マーカー発現と治療抵抗性克服への戦略について検討する。【対象・方法】検討1:幹細胞マーカー発現意義:肝内胆管癌(IHCC)(35例)・細胆管癌(CoCC)(3例)の幹細胞マーカー(CD133/44, OV-6)発現の意義。またIHCCにおけるHIF-1・HDACとの関連。検討2:ヒストンアセチル化の癌幹細胞制御)HCT-116(大腸癌)によりCD133・CD44共陽性細胞(FACS)、sphere形成能、stemness gene発現のHDAC阻害(VPA:valproic acid)効果。HuCCT1(胆管癌)のGem・VPA、HCT-116の5-FU・VPAの併用効果を解析(MTT)【結果】検討1:IHCCではCD133:51%、CD44:63%に陽性で独立予後因子。CoCCではCD133、CD44が全例陽性(100%)で、CD133/44重複率は、CoCCで有意に高値(IHCC:46%、CoCC:100%:P=0.02)。またOV-6陽性率はIHCC:0%、CoCC:100%で、生存率はIHCCに比してCoCCは有意に良好(P<0.05)。IHCCのHHIF-1/CD133・HDAC1/HIF-1発現は相関し(p<0.01)、共発現を確認。検討2:VPAによりHCT116のsphere形成能は減弱し、CD133/44発現細胞割合は1.7%→0.4%へ低下。stemness gene(Oct4, Nanog, Bmi-1)は濃度依存性に減弱。HuCCT1にGem単剤 5nM;0%、50nM;43%でGem 5nM+VPA 0.5mM併用で23%と増殖抑制効果が増強。HCT-116も5-FU単剤で39.1%、VPA併用で68%と増強。【結語】幹細胞マーカーは治療抵抗性を示す癌幹細胞とともに正常幹細胞由来の性質も表現している可能性があり注意を要する。またヒストンアセチル化は幹細胞制御により治療抵抗性を解除する可能性がある。
索引用語 幹細胞, ヒストンアセチル化