セッション情報 シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト

タイトル 肝S10-12:

肝細胞癌におけるEpCAM陽性細胞の癌幹細胞の可能性と抗癌剤耐性の検討

演者 木村 修(東北大・消化器内科)
共同演者 近藤 泰輝(東北大・消化器内科), 下瀬川 徹(東北大・消化器内科)
抄録 【目的】癌幹細胞は多分化・自己複製・腫瘍形成能をもつ一群であり、抗癌剤耐性などに関与していると報告があるが十分に解明されていない。我々はEpCAMに注目し、肝細胞癌における腫瘍始原細胞の同定を試み、細胞特性を明らかにすることを目的とした。【方法】1)Hep3B, Huh7, HepG2, Li7, PLC/PRF/5を用いて癌幹細胞マーカーを検討した。2)PLC/PRF/5をEpCAM+細胞とEpCAM-細胞にFACS Ariaで分離し、コロニー形成能、遊走能、抗癌剤耐性能を解析した。3)単一細胞分離後長期培養でEpCAMの発現がどのように変化するか解析した。4)EpCAM+細胞、EpCAM-細胞をNOD/scid/γcnull (NOG)マウスの皮下へ接種し腫瘍形成の差異を検討した。5)単一細胞分離によって得られたEpCAM+・EpCAM-細胞にlenti virusを用いてEpCAM遺伝子の導入し、腫瘍形成能にどのような影響を与えるのかを検討した。6)手術標本におけるEpCAMの発現を免疫組織染色で検討した(HBV;21, HCV;21, NBNC;18, TACE;10, 持続動注;4)。【結果】1)PLC/PRF/5のEpCAMのみが二峰性の発現をした。2)コロニー形成能はEpCAM+細胞が、遊走能については逆にEpCAM-細胞が有意に高い浸潤能を示した。抗癌剤に対してはEpCAM+細胞が抵抗性を示した。3)単一クローンにおいては、EpCAM-からはEpCAM+は出現しなかったが、EpCAM+からはEpCAM-が認められた。4)EpCAM+細胞がEpCAM-細胞と比較して腫瘍形成能を認めた。5)EpCAMの強発現においては部分的な形質獲得に留まり、元の細胞特性を維持していた。6)手術標本におけるEpCAMの発現は、治療後の残存肝細胞癌において高頻度にEpCAMの発現がみられた。さらに未治療症例においてはHBVがHCV、NBNCと比較し高発現した。【結論】陽性・陰性細胞の相違はEpCAMの有無のみではなく、他の腫瘍形成能を制御する分子機構が存在すると考えられた。EpCAM+細胞群に抗癌剤抵抗性を示す細胞群が多く含まれていた。臨床において治療を繰り返すことによりEpCAM陽性細胞が残存集積され、治療抵抗性進行肝細胞癌の機序に関与していることが推察された。
索引用語 癌幹細胞, EpCAM