セッション情報 |
シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)
肥満と消化器疾患
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タイトル |
肝S1-1:内臓肥満による脂肪組織機能不全と非アルコール性脂肪性肝疾患の発症と進展
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演者 |
江口 有一郎(佐賀大・総合診療部DELIMITER佐賀大・内科) |
共同演者 |
戸田 修二(佐賀大・病因病態科学), 藤本 一眞(佐賀大・内科) |
抄録 |
【はじめに】内臓脂肪は人体最大の内分泌臓器として生体恒常性維持に機能している。しかしひとたび肥満すると異所性脂肪として肝や骨格筋への脂肪蓄積に繋がりメタボリックシンドロームを発症する。我々はこれまで内臓肥満の肝病態、特にNAFLDの病態の広いスペクトラムでの意義を検討してきた。【内臓脂肪蓄積は連続性に肝に影響】健診550名で体組成計で評価した内臓脂肪量は、BMIでは肥満にならない体格からすでに血清ALT値と相関し(r=0.524,p<0.01)ALTは内臓脂肪量,中性脂肪,LDLコレステロール値を用いた回帰式で説明された。またドック5075名での腹部エコーでのNAFLD発症頻度とBMIの関係も非肥満から連続性に増加し、NAFLD発症に「肥満」の閾値がなかった。【内臓肥満とNASHの進展】内臓脂肪面積と肝の脂肪化は相関した。肝生検で線維化の進展した非アルコール脂肪肝炎(NASH)は内臓脂肪過多であった(p<0.05)。【NASHと内臓脂肪組織機能不全】内臓肥満を伴うNASHの腹腔鏡下内臓脂肪生検では脂肪細胞は走査電顕では細胞肥大の限界と想定される130~140μmまで肥大し、小型脂肪細胞の増殖も観察された。さらに活性化したM1macrophageの脂肪細胞周囲に王冠様構造(crown-like structures)をとり浸潤していた。内臓脂肪で慢性炎症が誘導され脂肪組織機能不全が生じていることが示唆された。【内臓肥満と肝と骨格筋の脂肪化の連関】骨格筋脂肪化の指標として我々が考案した多裂筋脂肪化(intramuscular adipose tissue content, IMAC)は内臓脂肪量と相関し、NAFLDでは正常に比べ進展し、NASHの線維化の進展と関連した。【内臓脂肪減量と肝病態改善】食事運動療法による内臓肥満の解消によりほとんどの糖脂質異常とともに肝脂肪化は改善する。多変量解析では内臓脂肪とIMACの減少はNAFLDの病態改善に関連する独立因子であった。【まとめ】内臓脂肪は臓器としてダイナミックに疾患の発症以前より肝に影響を及ぼし、過剰蓄積はNAFLDの広いスペクトラムにおいて病態を修飾している。 |
索引用語 |
内臓脂肪型肥満, NASH |