セッション情報 シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)

肥満と消化器疾患

タイトル 消S1-2:

アディポカイン産生調節からみた内臓脂肪組織におけるBAFFの役割

演者 阿部 雅則(愛媛大大学院・先端病態制御内科学DELIMITER愛媛大大学院・地域医療学)
共同演者 濱田 麻穂(愛媛大大学院・先端病態制御内科学), 恩地 森一(愛媛大大学院・先端病態制御内科学)
抄録 【目的】内臓脂肪組織は、肥満によるNASHなどの消化器疾患の発症機構の基盤となっている。内臓脂肪組織では、脂肪細胞と炎症細胞から様々なアディポカインやサイトカインが産生され、インスリン抵抗性を誘導しメタボリック症候群を引き起こす。演者らは、肥満マウスと肥満を伴うNASH患者において血清中のB細胞活性化因子(BAFF) 濃度が上昇し、特に内臓脂肪組織でBAFF発現が増加していることを報告した。今回、内臓脂肪組織に対するBAFFの影響、とくにアディポカイン産生への影響について解析した。【方法】1) 肥満マウスモデルとして高脂肪食誘導C57BL/6マウスを用いた。各臓器におけるBAFF-Rの発現をRT-PCRと免疫染色で解析した。2) 脂肪分化細胞である3T3-L1細胞とC3H/10T1/2-clone 8 (C3H)細胞における分化前後でのBAFF-Rの発現をRT-PCRで解析した。3) BAFFを脂肪細胞に添加し、アディポカインの発現変化をRT-PCRとELISAで解析した。4) C57BL/6マウスにrecombinant BAFFを5日間投与し、内臓脂肪組織におけるアディポカインの発現をRT-PCRで解析した。【成績】1) 肥満マウスでのBAFF-R発現は、肝臓・筋肉・膵臓に比し、内臓脂肪組織で高かった。また、免疫染色では脂肪細胞にBAFF-Rが発現していた。2) 3T3-L1細胞とC3H細胞では、分化脂肪細胞でBAFF-Rの発現が増強した。3) BAFFを3T3-L1細胞に添加すると、IL-6, MCP-1, レジスチンの発現が増強した。BAFF-R Fcを同時に添加すると、これらの発現増強はみられなくなった。また、BAFF添加により3T3-L1細胞の培養上清中のTNF-α, IL-6, レジスチン濃度は上昇し、アディポネクチン濃度は低下した。4) マウスにBAFFを投与すると、内臓脂肪組織におけるTNF-α, IL-6, レジスチン発現が増加し、アディポネクチン発現は低下した。【結語】肥満に伴い血清中に増加するBAFFは、内臓脂肪組織において上流因子としてアディポカインの産生を調節している。
索引用語 内臓脂肪, アディポカイン