セッション情報 シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)

肥満と消化器疾患

タイトル 消S1-3:

胃粘膜傷害におけるアディポネクチンの防御的役割

演者 山本 俊祐(大阪大・消化器内科)
共同演者 渡部 健二(大阪大・消化器内科), 竹原 徹郎(大阪大・消化器内科)
抄録 【目的】最近、肥満は胃炎の原因の1つであると考えられている。アディポネクチン(APN)は脂肪組織から血中に分泌され、抗動脈硬化・糖尿病・炎症作用を有し肥満で分泌が低下する。本研究の目的は胃粘膜傷害におけるAPNの役割を明らかにすることである。【方法】1)住友病院人間ドック受検者を対象として、内視鏡的びらん性胃炎を認めたものを胃炎ありとし、胃炎と他の内視鏡所見、血中APN値、年齢、性、飲酒、喫煙、BMI、血圧、脂質・糖代謝との相関を検討した。2)APNノックアウトマウス(APN-KO)と野生型マウス(WT)でエタノール誘発性胃炎での粘膜傷害の程度を比較し、傷害発生に関わる分子群の発現を比較検討した。3)RGM1細胞を用いてWound healing assay(WHA)を行い、細胞遊走能に対するAPNの影響を検討した。【成績】1)研究対象は2400人(男/女1532/868)、胃炎あり/なし248(10%)/2152。胃炎の内訳は前庭部のたこいぼ胃炎が多く、逆流性食道炎を多く伴い、過酸との関連が推測された。胃炎あり群でBMI高値、APN低値を認め、単変量解析ではこれらの他、男性、非喫煙、高血圧、中性脂肪高値、IRI高値、逆流性食道炎、十二指腸炎が有意な胃炎の危険因子であった。多変量解析の結果、APN低値、非喫煙、高血圧、十二指腸炎が独立した胃炎の危険因子であった。2)APN-KOはエタノール投与4時間後にWTより高度の胃粘膜傷害を呈した。エタノール投与前の胃プロスタグランジンE2(PGE2)発現量は両マウスで差はなく投与後はAPN-KOで低値を示した。3)APNを添加したRGM1では遊走能が亢進し、PGE2とCOX2の発現が増加していた。【結論】人間ドック受検者を対象とした臨床研究により低APN血症が内視鏡的びらん性胃炎の独立した危険因子であることが示された。さらに動物モデルなどを用いた基礎的研究を行い、APNが胃粘膜傷害に対して防御的役割を果たしている可能性が示唆された。
索引用語 アディポネクチン, 胃炎