セッション情報 シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)

肥満と消化器疾患

タイトル 消S1-5:

肥満と上下部消化管疾患

演者 藤本 愛(虎の門病院・消化器内科)
共同演者 橋本 光代(虎の門病院・消化器内科), 貝瀬 満(虎の門病院・消化器内科)
抄録 目的:肥満と上下部消化管疾患の関連について検討する。 方法:2008年1月1日から2010年12月31日まで当院で人間ドッグを受診した42862名のうち、胃・大腸切除歴がなく胃内視鏡を選択した連続した18792名(54.2±10.9歳 男女比 5482:13310)と大腸内視鏡を選択した連続した1586名(56.6±10.7歳 男女比1245:341)を対象とした。上部消化管疾患は逆流性食道炎gradeA以上(n=4354)・食道裂孔ヘルニア(n=4730)・バレット食道(n=1492)・胃潰瘍/胃潰瘍瘢痕(n=139)・十二指腸潰瘍/十二指腸潰瘍瘢痕(n=1353)、下部消化管疾患は大腸腺腫(n=494)・大腸憩室(n=181)について性別・年齢・肥満(BMI25以上)・HgbA1c・中性脂肪・総コレステロール・高血圧・喫煙・飲酒を独立因子としてロジスティック多変量解析を行い、有意な危険因子を検討した。成績:1) 非肥満群(n=14377)と比較し肥満群(n=4415)で多かった消化管疾患は逆流性食道炎(p≦0.0001)・食道裂孔ヘルニア(p≦0.0001)・バレット食道(p=0.0004)・大腸腺腫(p=0.0023)であった(χ2乗検定)。2) ロジスティック多変量解析を行うと、逆流性食道炎に関しては、男性(p≦0.0001)・低年齢(p≦0.0001)・高TG血症(p≦0.0001)・肥満(p≦0.0001)・高血圧(p=0.0218)・多量飲酒者(p≦0.0001)、食道裂孔ヘルニアに関しては、男性(p≦0.0001)・低年齢(p=0.0042)・高TG血症(p=0.0001)・肥満(p≦0.0001)が有意な危険因子であった。しかしバレット食道に関して肥満は意な危険因子にならなかった。3) 大腸腺種に関しては、男性(p=0.0008)・高齢者(p≦0.0001)・耐糖能異常(p=0.0059)・高TG血症(p=0.0013)・多量飲酒者(p=0.0003)が有意な危険因子であったが、肥満は危険因子とならなかった。結論: 逆流性食道炎・食道裂孔ヘルニアにおいては、肥満は強力な危険因子であり、若年男性で飲酒や生活習慣病などのライフスタイルが疾患の成因に強く関与していると考えられる。大腸腺種において肥満は有意な危険因子ではなく、耐糖能異常が成因に関与している可能性がある。
索引用語 肥満, 消化管疾患