セッション情報 シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)

肥満と消化器疾患

タイトル 消S1-6:

血清GIP値の上昇は、ヒト大腸腺腫の新しい危険因子である

演者 佐々木 悠(山形大・消化器内科)
共同演者 武田 弘明(山形大附属病院・光学医療診療部), 河田 純男(山形大・消化器内科)
抄録 【目的】我々は、メタボリック症候群の病態の中心的な役割を果す内臓脂肪蓄積型肥満やそれに伴うインスリン抵抗性、アディポネクチンの低下が、大腸腺腫のリスクに関わっていること報告してきた。一方、Glucose-dependent insulinotropic polypeptide(GIP)は、食事摂取に応じ上部小腸から分泌されるインスリン分泌刺激作用をもつ消化管ホルモンであり、近年の研究でインスリン抵抗性や脂質代謝、肥満にも関わっていることが示されている。そこでGIPと大腸腺腫との関係を検討した。【方法】2008年中に健診のために全大腸内視鏡検査を受け、内視鏡的に大腸腺腫を認めず、大腸ポリープ切除既往のない261例を対照群とし、内視鏡的に大腸腺腫と診断した109例を腺腫群として症例対照研究を行った。静脈血を一晩絶食後に採取し、ELISA 法にて血清GIP(Total)濃度を測定した。【成績】腺腫群では、対照群に比べ、男性の割合が高く、年齢や腹囲、拡張期血圧、血糖やインスリン、中性脂肪、HOMA-IR値が有意に高かったが、喫煙者や飲酒者の割合、BMIに有意な差は認められなかった。GIP値は、腺腫群で有意に高値であった(34.9 ± 49.5 pg/ml vs. 25.0 ± 20.1 pg/ml; p = 0.04)。また男性に限ると、GIP値は、腺腫群(36.6 ± 52.7 pg/ml)で、対照群(23.7 ± 15.6 pg/ml; p = 0.02)に比べ有意に高値であったが、女性のみでは有意な違いは認めなかった。対象者をGIP値で4分位に分け多変量解析を行ったところ、第一4分位群に比べ第四4分位群では、大腸腺腫のリスクが有意に高かった(オッズ比 2.1, 95%信頼区間 1.08-3.96)。また、第一4分位群に比べ第四4分位群ではインスリン値とHOMA-β値が有意に高く、GIP値の増加と弱い正相関があった。さらに、GIP値の増加とともにHOMA-IR値も高くなる傾向があった。【結論】GIP値の上昇は、大腸腺腫のリスクと関連していることが示唆された。GIPは、肥満、インスリン抵抗性、高インスリン血症と大腸腺腫の発育進展とに関わる新たな要因として注目される。
索引用語 大腸腺腫, GIP