抄録 |
【目的】 2010年改訂WHO分類では混合型肝癌はclassical typeとsubtypes with stem-cell featuresに分類され、後者はさらにtypical subtype、intermediate-cell type、cholangiolocellular typeへの亜分類が提唱されているが、分類の意義や各亜型の予後は明確ではない。Delta-like protein (DLK)-1は最近、肝ステム細胞マーカーとして報告されており、今回我々は混合型肝癌におけるDLK-1発現を検討し、WHO分類の意義について考察した。【方法】 対象は混合型肝癌42例の外科的切除材料。肝細胞への分化は胆汁産生や免疫組織学的なHepPar1発現を指標とし、胆管細胞への分化は粘液産生や免疫組織学的なcytokeratin (CK)7, CK19発現を指標とした。HepPar1とCK19の二重免疫染色でintermediate-cellを同定した。肝ステム細胞関連分子としてDLK-1, NCAM/CD56, Ep-CAM, CD133の免疫組織学的発現を半定量的に調べ、二重免疫染色で陽性細胞の局在を同定した。Mann-Whitney’s U test, Kaplan-Meier法を用いて、統計学的に解析した。【成績】 混合型肝癌はclassical type 12例(28.6%)、stem-cell type 30例 (71.4%)に分類され、Kaplan-Meier法を用いた生存率の検討では、予後はclassical typeと比較してstem-cell typeが有意に悪かった。免疫組織学的にDLK1, NCAM/CD56, CD133はstem cell typeで有意に発現頻度が高かった。DLK1はtypical subtypeおよびcholangiolocellular subtypeではNCAM/CD56陽性細胞に、intermediated-cell subtypeではintermediate-cellでの発現がよく認められた。 【結論】 WHO分類でsubtypes with stem-cell featuresに分類される腫瘍では肝ステム細胞関連分子の発現をよく認め、classical typeと比較して予後不良であった。Stem-cell typeの混合型肝癌は肝ステム細胞に関連した腫瘍発生群を含む可能性があり、病態解明や予後の観点から、新WHO分類に沿った混合型肝癌の組織分類が望まれる。 |