セッション情報 シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)

肥満と消化器疾患

タイトル 肝S1-10:

肝脂肪化とオートファジー機能不全

演者 稲見 義宏(順天堂大・消化器内科)
共同演者 山科 俊平(順天堂大・消化器内科), 渡辺 純夫(順天堂大・消化器内科)
抄録 【目的】近年、蛋白分解機構の一つであるオートファジーの機能障害がウイルス増殖や発癌などさまざまな病態に関与することが明らかとなってきた。我々は、脂肪肝モデルマウスにおいて肝細胞のオートファジーを介した蛋白分解が障害されていることを報告してきた。今回、脂肪肝におけるリソソームとオートファジー動態を評価し、オートファジー機能不全の機序について検討を行った。【方法】12週齢雄性C57BL/Cマウスとob/obマウスより肝細胞を単離し、細胞内のリソソームとオートファゴソーム局在をLAMP1とLC3抗体を使用し、共焦点蛍光顕微鏡にて評価した。メトリザミド密度勾配法にて肝組織よりオートファゴソームとリソソームを単離し、リソソーム-オートファゴソーム融合をFusion assayにて評価した。肝組織中カテプシンBとLの活性測定を行い、ウエスタンブロット法にて発現を評価した。【結果】ob/obマウス肝細胞では、コントロールマウス肝細胞と同様にLC3発現部位にLAMP1が共発現しておりオートファゴソームにリソソームが融合していることが想定された。一方、ob/obマウス肝から単離したオートファゴソームとリソソームの融合は、コントロールマウス肝と同様に30分で100%融合し有意差を認めなかった。ob/obマウス肝のカテプシンBとL活性はコントロールマウス肝と比較し約40%に低下していた。またob/obマウス肝ではコントロールマウス肝と比較しカテプシンBとLの発現が有意に低下していた。【考察】肝細胞内への脂肪蓄積はオートファゴソームとリソソームの融合に影響を与えなかったが、カテプシン発現異常や活性化障害を誘導した。以上より脂肪滴蓄積によるリソソーム機能異常がオートファジー機能不全を誘導したものと想定された。リソソームやオートファジーを介した蛋白代謝異常は細胞内封入体形成や細胞周期に関与することから脂肪性肝炎で観察されるMallory-Denk body形成や肝癌の原因として重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
索引用語 脂肪肝, オートファジー