セッション情報 シンポジウム1(消化器病学会・肝臓学会合同)

肥満と消化器疾患

タイトル 消S1-13:

NASHを含めた慢性肝疾患患者における血中オンコスタチンM値の検討

演者 寺井 崇二(山口大・消化器病態内科学)
共同演者 大石 俊之(山口大・消化器病態内科学), 坂井田 功(山口大・消化器病態内科学)
抄録 【目的】NASH は発症原因が未だ明らかでなく、確定診断には肝生検が必要である。種々のスコアリングシステムが考案されてはいるが、肝生検に代わるバイオマーカーは未だ確立されていない。我々はIL-6ファミリーのサイトカインである、オンコスタチンMに着目し、慢性肝疾患との関連について解析した。【方法】対象は2008年1月から2010年5月までの間に、当科を受診した症例の内、肝疾患(HBV 21例・HCV 116例・HBV+HCV 2例・Alcohol 11例・AIH 12例・PBC 12例・NAFLD 44例・他13例)を罹患している患者231例(男117例、女114例)で同意を得られた患者から血液を採取し、ELISA法にてオンコスタチンM値を測定した。測定結果から、測定感度(17.6pg/ml)以上の群(以下OSM上昇群)と、測定感度未満(以下OSM非上昇群)の群に分けて各血液検査項目について解析した。【成績】OSM上昇群は94例、非上昇群は137例で、男女比に差は認められなかった。両群の単変量解析を行ったところ、OSM上昇群では非上昇群に比べ、BMI(23.4±3.6 vs 24.4±4.3, p<0.05)、アルブミン(3.55±0.71 vs 3.89±0.68, p<0.001)、コリンエステラーゼ(212±115 vs 260±117, p<0.01)、AST(55±32 vs 45±34, p<0.05)、血小板数(12.7±6.9×104 vs 16.2±7.0×104 p<0.001)が低く、グロブリン(3.8±0.7 vs 3.4±0.7 , p<0.0001) が高い結果であった。また、両群で血中脂肪酸量を測定したところ、OSM上昇群では、非上昇群に比べ、総脂肪酸量が低かった(p<0.05)。全脂質脂肪酸分画の解析比較では、上昇群では、非上昇群に比べEPA/AA比が低い傾向が認められた (p<0.05)。有意差が認められた項目で多変量解析を行ったところ、上昇群では非上昇群に比べ、グロブリンが高かった (p<0.05)。さらにOSM上昇群には、NASH進展症例(NAS 6点)も認められ、同症例のOSMの肝組織免疫染色で発現の増加が確認された。【結論】OSMの上昇は、BMI上昇、EPA/AA比の低下と関連しており、肝疾患さらには動脈硬化などの病態進展と相関する可能性が示唆された。
索引用語 NASH, オンコスタチンM