セッション情報 シンポジウム10(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

肝発癌・進展機序研究に与える幹細胞学のインパクト

タイトル 肝S10-14:

混合型肝癌細胞株KMCH-1とKMCH-2のオリジナル腫瘍と細胞株におけるprogenitor cell markerの発現とその意義

演者 小笠原 幸子(久留米大・病理学)
共同演者 秋葉 純(久留米大・病理学), 矢野 博久(久留米大・病理学)
抄録 【目的】混合型肝癌(CHC)は、しばしば肝幹細胞/前駆細胞(HSPC)のマーカーを発現しておりHSPC由来の腫瘍の可能性が示唆される。一方、HSPCマーカーは癌幹細胞 (CSC)のマーカーとも重複があり、その発現の意義は明確ではない。今回CHC細胞株(KMCH-1、KMCH-2)を用いてその意義を検討した。【方法】KMCH-1株とKMCH-2株におけるHSPCマーカー (CK7, CK19, CD133, CD34, c-kit, CD56, EpCAM)の発現を検討した。次にcell sorterでKMCH-1株はEpCAM陽性細胞を、KMCH-2株はCD133陽性細胞を分離しそれぞれ陰性細胞と形態的・生物学的特徴(細胞増殖、薬剤耐性、造腫瘍性)を比較検討した。【結果】KMCH-1株のオリジナル腫瘍はclassical typeの混合型肝癌で、オリジナル腫瘍とKMCH-1株においてCK7, CK19, EpCAMの発現を認めた。またKMCH-1株はアルブミンの分泌と粘液の産生を認めた。EpCAM陽性細胞と陰性細胞に形態的な差は認めなかったが、免疫染色で陽性細胞はAFP陰性、CK19陽性であった。EpCAM陽性細胞では7日間培養後にEpCAM陽性細胞と陰性細胞の出現を認めたがEpCAM陰性細胞は49日後もEpCAM陰性細胞のみであった。EpCAM陽性細胞は増殖速度が速くCisplatinにより抵抗性を示し、NOD-SCIDマウスにおいて優位に高い造腫瘍性を示した。KMCH-2株のオリジナル腫瘍は stem cell subtype-intermediate typeの混合型肝癌で、オリジナル腫瘍とKMCH-2株においてCK19, CD133の発現を認めた。KMCH-2株にもアルブミンの分泌を確認した。CD133陽性細胞と陰性細胞において形態的にもHSPCマーカーの発現にも差を認めなかった。CD133陽性細胞が細胞増殖が速かったが薬剤耐性に差は認めず、NOD-SCIDマウスにおいても造腫瘍性に差を認めなかった。【結語】KMCH-1とKMCH-2はHSPCマーカー発現する混合型肝癌株であった。CHCのEpCAMを発現細胞はCSC様の性格を示し生物学的により悪性度が高かった。
索引用語 混合型肝癌, 癌幹細胞