セッション情報 シンポジウム2(肝臓学会・消化器病学会合同)

C型肝炎個別化医療のための宿主因子・ウイルス因子

タイトル 肝S2-5追1:

C型慢性肝炎のインターフェロン治療抵抗性機序におけるIL-6の関与

演者 中川 美奈(東京医歯大・消化器内科)
共同演者 坂本 直哉(東京医歯大大学院・分子肝炎制御学), 渡辺 守(東京医歯大・消化器内科)
抄録 【目的】生体防御反応や免疫機能制御を担う多機能サイトカインとして知られるインターロイキン6(IL-6)が、肝炎の進展や肝発癌にも関与するという報告がなされている(Naugler 2007 Science, Ji NEJM 2009)。今回我々はC型慢性肝炎の治療抵抗性におけるIL-6の関与について検討を行った。
【方法】2004年12月より当院および研究協力施設でインターフェロン(IFN)治療を導入したC型慢性肝炎で最終効果判定可能症例のうち、IL-6の値に影響を及ぼすとされる悪性腫瘍、膠原病を含めた抗核抗体陽性例、感染症などを除外した149例の保存血清を用いてIL-6を測定し、健常人(n=10)との比較、その他の各種臨床因子とともに治療効果への関与を検討した。またHCVレプリコンシステムを用いた分子生物学的手法により、IFN伝達系におけるIL-6の関与に関しても解析を行った。
【結果】男性83人、女性66人、対照群と患者群における治療前IL-6値の比較では、性差は認めないものの対照群では中央値が0.75であったのに対し患者群では3.0と有意に高値であった。男女あわせた解析では治療効果と治療前血清IL-6に有意な相関は認めなかったが、男性においては非著効例で治療前血清IL-6は有意に高く、治療後経過を通じても有意に高値で推移した。HCV培養細胞系を用いた検討では、IFN抵抗株でIL-6およびその下流分子であるSOCS3の発現増強、IFN誘導遺伝子(ISG)の発現低下を認めた。また、IL-6抗体処理によりSOCS3の低下およびIFN抵抗性の解除が確認された。
【考察】IL-6によるIFNシグナル伝達系の抑制が治療抵抗性に関与する可能性が示唆された。現状のIFNを基軸とした治療における難治症例においては、IL-6を標的とした治療の追加が治療抵抗性の解除につながる可能性が示唆された。
索引用語 IL-6, 治療抵抗性