セッション情報 シンポジウム2(肝臓学会・消化器病学会合同)

C型肝炎個別化医療のための宿主因子・ウイルス因子

タイトル 肝S2-8:

データマイニング解析に基づくC型肝炎の個別化医療

演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】C型肝炎に対する個別化治療のために、発癌リスク、PEG-IFN・RBV療法の治療効果、副作用を予測するモデルをデータマイニングにより構築した。【方法】IFN非著効例1,003例を対象として5年以内の発癌を予測するモデルを構築し1,072例の外部コホートで検証した。PEG-IFN・RBV療法で12週以内にHCV RNAが陰性化した(cEVR)951例を対象として再燃を予測するモデルを構築し598例の外部コホートで検証した。IL28B遺伝子、ITPA遺伝子、ISDRを測定した474例を対象として貧血予測モデルを構築した。【成績】発癌予測:年齢、血小板数、アルブミン、ASTにより5年発癌率が0~21%の7グループを同定した(検証r2=0.96)。発癌リスクの高い4グループ(平均5年発癌率9%)ではSVRにより5年発癌率が4%まで減少した(p=0.04)。cEVRからの再燃予測:4週HCV RNA陰性化、年齢、総RBV量により再燃率が13~52%の5グループを同定した(検証r2=0.83)。再燃率の高いグループでもISDR変異型は野生型と比較し再燃率が低かった(5% vs 30%, p=0.02)。IL28Bはウイルス陰性化と強く関連したが再燃とは関連しなかった。貧血予測:ITPA、Ccr、Hbにより治療中の貧血(Hb<10g/dl)出現率が19~75%の6グループを同定した。貧血リスクは総RBV量(p=0.0008)、IL28B Majorの症例における再燃(p=0.08)とSVR (p=0.04)に関連した。貧血高リスク症例やISDR野生型でも3g/体重kg以上の総RBV量により再燃率が抑制された。【結論】発癌リスク予測により治療が必要な症例を囲い込める。PEG-IFN・RBV療法の効果予測にはIL28Bが最も有用だが、cEVRが得られた症例では年齢、ISDRにより再燃リスクを評価し治療を個別化すべきである。ITPAを含む予測モデルで貧血リスクが高い症例では3g/体重kg以上の総RBV量を確保するための治療計画が必要である。これらの情報に基づく個別化治療戦略が治療成績の向上に寄与すると期待される。(共同研究:大阪大学、虎の門病院、東京医科歯科大学、大阪市立大学、成蹊大学、名古屋市立大学、山梨大学、国立病院機構、長崎医療センター)
索引用語 データマイニング, 予測