セッション情報 シンポジウム2(肝臓学会・消化器病学会合同)

C型肝炎個別化医療のための宿主因子・ウイルス因子

タイトル 消S2-10追3:

肝炎コホートにおけるHCV自然治癒および肝発癌関連因子からみたC型慢性肝炎に対する個別化医療の可能性

演者 渡辺 久剛(山形大・消化器内科)
共同演者 斎藤 貴史(山形大・消化器内科), 河田 純男(兵庫県立西宮病院・内科)
抄録 【目的】ペグインターフェロン・リバビリン併用療法の治療効果や副作用を事前予測することは肝炎治療の個別化に重要であり、そのためにはまず抗ウイルス治療適応例の選択や肝発癌に関わる因子について、HCV持続感染者の自然経過とその背景を明らかにすることが必要である。そこで一般住民の肝炎コホートを用いてHCV自然治癒および肝発癌関連因子について解析し、C型肝炎に対する個別化医療への応用の可能性を検討した。【方法】1991年より2009年までHCV高浸淫地域8,000名余りを対象にHCV RNA持続陽性者をコホート追跡した。抗ウイルス治療歴のない456名について経年的にTaqMan HCVにてウイルス血症を解析し、IL28B近傍 SNP、core 70/91アミノ酸変異等を含むHCV自然治癒および自然肝発癌関連因子を検討した。【結果】45名(9.9%)においてHCV自然治癒を確認できた。本コホートにおけるIL28B遺伝子多型の頻度はTT :76.4%、TG :21.6%、GG:2%であり、HCV自然治癒群ではTTの頻度が95.6%と有意に高く、HCV持続感染群ではTG/GGの頻度が25.7%と有意に高かった。自然治癒関連因子について多変量解析したところ、IL28B遺伝子多型が最も重要な因子(HR: 8.16、p<0.01)であった。TT群347例とTG/GG群107例を比較すると、TT群ではZTT値が低く、HCV自然治癒、core 70Wおよびcore DWの頻度が有意に高かった。一方自然肝発癌例においては、非発癌例と比較しTG/GGの頻度が35%を占め、有意に高い傾向にあった。自然肝発癌関連因子を多変量解析してみると、AST値、ALT値のほかIL28B遺伝子多型が独立した関連因子として抽出された。【結論】IL28B遺伝子多型は、肝炎コホートにおけるHCV自然治癒関連因子および肝発癌関連因子として重要であることが明らかとなった。このことから住民コホートにおいても、IL28B遺伝子多型の測定が自然予後を含むC型肝炎に対する個別化医療への応用に有用である可能性が示唆された(謝辞:名古屋市立大学 田中靖人先生)。
索引用語 肝炎コホート, 個別化医療