セッション情報 シンポジウム2(肝臓学会・消化器病学会合同)

C型肝炎個別化医療のための宿主因子・ウイルス因子

タイトル 肝S2-14:

ヒト肝細胞での自然免疫応答におけるIFN-λの重要性とその誘導メカニズム

演者 平田 雄一(東京都医学総合研究所・感染制御プロジェクト)
共同演者 井上 和明(昭和大藤が丘病院・消化器内科), 小原 道法(東京都医学総合研究所・感染制御プロジェクト)
抄録 【目的】自然免疫は非自己RNAを認識し、IFNを産生する。我々は、dsRNAであるpolyICと肝臓特異的DDSであるカチオニックリポソームの複合体(polyIC-LIC)が、ヒト肝臓においてIFNβでなくIFNλを強力に誘導し抗HCV効果を示すことを報告した。しかし、IFNλとIFNβが自然免疫においてどのような役割を果たしているかは明らかでない。そこで、IFNλ及びIFNβの役割を明らかにするため、ウイルス感染及びpIC-LIC投与時のIFNλ、IFNβの応答をin vivo, in vitroで評価した。さらに、その誘導メカニズムを明らかにすることを試みた。【方法】HCV感染およびpIC-LIC の投与によるヒト肝臓型キメラマウスでの肝臓内IFNλ、IFNβの発現量の変化を評価した。次に、各種細胞株(肝臓由来のHepG2、肺由来のMRC5、及び腎臓由来のHEK293T)でのpIC-LIC投与時のIFNλ、IFNβの応答を評価するともに、siRNAを使用した遺伝子ノックダウンを行いその誘導メカニズムを調べた。【成績】HCV感染及びpolyIC-LIC投与により、ヒト肝臓キメラマウスの肝臓内ではIFNλがIFNβに比べ著明に誘導されていることを見出した。in vitroの実験では、HepG2において、pIC-LIC投与によりIFNλがIFNβに比べ誘導されるのに対し、MRC5、HEK293TではIFNβがIFNλに比べ優位に誘導された。さらに、RNAの認識に必須の受容体であるTLR3のアダプター分子(TICAM-1), 及びRetinoic Acid-Inducible Gene-I(RIG-I)-like receptor(RLR)の下流分子であるIPS-1をノックダウンしたところ、いずれにおいてもIFNλの誘導が抑制された。【結論】ヒト肝細胞での自然免疫応答においてIFN-λが重要な役割を果たしていることがin vivo, in vitroで示された。また細胞株を使用した実験から、臓器によりIFN応答が異なることが示された。さらに、RNAがToll like receptorおよびRLRの両経路に認識されIFN-λを誘導していることが明らかとなった。これらの結果は、ヒト肝細胞に感染するHCVに対する治療法に重要な示唆を与えるものであると考えられた。
索引用語 HCV, IFN-λ