セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎 抗ウイルス療法の進歩と耐性

タイトル 肝S3-5追3:

LAM耐性ウイルスに対する核酸アナログ療法の治療反応性の検討

演者 平野 克治(順天堂大静岡病院・消化器内科)
共同演者 玄田 拓哉(順天堂大静岡病院・消化器内科), 市田 隆文(順天堂大静岡病院・消化器内科)
抄録 【目的】核酸アナログ療法は、B型慢性肝炎の治療に極めて有効であるが、耐性ウイルスへの対応が大きな課題である。特に、ラミブジン(LAM)耐性ウイルス例での多重耐性の出現が問題となってきている。今回、LAM耐性ウイルスと核酸アナログに対する治療反応性から多重耐性ウイルスの出現との関連について検討した。【対象と方法】2010年12月までに当院でB型肝炎に対して核酸アナログ療法を施行した165症例を対象とした。投与された核酸アナログは、(1)LAMのみ投与67例、(2)LAM耐性出現のためにアデホビル(ADV)を併用した17例、(3)LAMからエンテカビル(ETV)への切り替え投与12例、(4)ETVのみ投与86例であった。各群の治療反応性について比較検討した。【成績】LAM+ADV群は治療開始前のHBV-DNA量が6.7 log copies/mlと他群に比し有意に高値であった(P<0.05)。治療後の平均のHBV-DNA量の推移は、LAM+ADV群で治療後24週の時点ではウイルス量の低下が他群に比し不十分であったが、48週、96週以降では他群と同程度にウイルス量が低下していた。LAM+ADV群を治療後24週の時点でHBV-DNA量が4 log copies/ml以上の反応不応群7例と4 log copies/ml以下の反応良好群8例とに分けて背景因子を比較するとADV反応不応群では、ADV併用前のHBV-DNA量が有意に高く(P<0.05)、またADV反応不応群からのみ3例にviral breakthroughを認めた。3例のうち、2例ではLAMとETVの多重耐性が確認された。この2例は、ADV併用後24週で4log copies/ml以上であったためETVに変更したところviral breakthroughを認めた。薬剤耐性検査ではLAMとETVとに耐性を認めたが、ADVの耐性は認められなかった。現在、ETVにADVを併用したところウイルス量の低下が得られている。【結論】LAM耐性に対するADVの併用療法の治療の反応性は24週の時点では約半数の例で治療効果不十分であった。しかし、そのために薬剤を変更することで多重耐性ウイルスが出現する可能性もあるため、ADV耐性が出現するまでは継続投与が重要ではないかと考えられた。
索引用語 B型肝炎, ラミブジン耐性