セッション情報 シンポジウム3(肝臓学会・消化器病学会合同)

B型肝炎 抗ウイルス療法の進歩と耐性

タイトル 肝S3-6追4:

B型慢性肝疾患に対する核酸アナログ耐性例の検討

演者 中西 裕之(武蔵野赤十字病院・消化器科)
共同演者 黒崎 雅之(武蔵野赤十字病院・消化器科), 泉 並木(武蔵野赤十字病院・消化器科)
抄録 【目的】B型慢性肝疾患核酸アナログ耐性例の治療について検討する。【方法】対象はB型慢性肝疾患核酸アナログ治療314例。Lamivudine(LAM)長期投与中にbreakthrough hepatitisを発症しAdefovir(ADV)を併用したLAM+ADV43例と、Entecavir(ETV)投与124例、ETV耐性を認めた11例についての臨床的,ウイルス学的特徴を検討した。【結果】LAM+ADV43例におけるHBVDNA陰性化率は1年58.8%、2年71.8%、3年77.1%であり、最終的に36例(83.7%)でHBVDNA持続陰性化が得られた。ALT持続正常化は36例(83.7%)、HBe抗原陰性化は26例(60.4%)であった。しかし、長期投与例からLAM+ADV耐性例が1例(2.3%)出現した。この症例におけるLAM+ADV投与4年時点でのpolymerase遺伝子変異はADV耐性のA181T、N236T、ETV耐性のM250L、LAM耐性のV173L、L180M、M204Vであり、多剤耐性であった。その後ETV+ADVで治療が行われ、HBV-DNAは3.1 log copies/mlまで低下したが陰性化は得られず。また、ETV耐性例11例中10例は、LAM長期投与で耐性を認めた後にETVが投与された症例であった。そのうち6例はLAM+ADVに切り替え、2例でHBVDNA陰性化が得られた。HBV陰性化しない4例中3例はETV+ADVに切り替え、1例でHBVDNA3.4log copies/mlまで改善するもHBV陰性化せず。耐性例におけるpolymerase遺伝子変異はrt184S/C/G 1例、rt184F 1例、rt 184L 2例、rt 250L 2例、rt 202G 1例に認められた。尚、B型慢性肝疾患核酸アナログ未治療例に対しETVで治療導入された100例と、LAM長期投与かつHBVDNA<2.1 log copies/mlで、ETVへ切り替えた13例からのETV耐性は認めなかった。一方で、LAM長期投与140例のうち、投与3年時点でHBVDNA陰性であった61例中13例(21.3%)でその後にvirological breakthroughを認めており、LAM長期投与HBVDNA陰性化例でもETVへの変更を検討すべきと考えられた。【結語】LAM、ADV、ETVを適切に投与することでB型慢性肝疾患の治療効果は良好であるが、長期投与により多剤耐性ウイルスがみられ、このような症例では新規抗ウイルス薬が必要と考えられた。
索引用語 HBV, 核酸アナログ